- 第2回 : 「ディフェンス戦術の類型 〜瀧井氏著書による補足〜」
-
ここでは瀧井 敏郎氏の著書である「ワールドサッカーの戦術」を参考・引用して、前項「ディフェンス戦術の類型」の補足説明を行っていくことにする。
1.コンパクトサッカーとゾンディフェンスへの傾斜
2.ゾーンディフェンスの分類
3.ラインコントロールで相手の攻撃を封じる(奥野僚右のDFセミナー)
参考文献及び出典
1.「ワールドサッカーの戦術(1995年)」
: 瀧井 敏郎
2.「サッカークリニック(2003年7月号)」
: 奥野 僚右
- 1.コンパクトサッカーとゾンディフェンスへの傾斜
- ■ハンガリーのMMシステムとポジションチェンジ
「マジックマジャール」と言われていた1950年代ハンバリー代表のシステムはMMシステムと呼ばれていた。
しかしながらこのシステムは実際にはWMシステムだったのだが、なぜにこれが”MM”などと呼ばれるようになったのだろうか?
それは通常のWMシステムにはなかった特徴的な動きを前線の選手が繰り返したからである。
センターフォワード(CFW)とインナーフォワード(IFW)が相手DFのマンマークを逆手に取り、
意図的な前後のポジションチェンジを頻繁に行うことでマークのズレとゴール前のスペースを生み出すことに成功した。
”MM”とはポジションチェンジ後の形が非常に特徴的なものであったために付けられた名称であったのだ。
例えば1974年のワールドカップに関して、デッドクラマーらも参加したFIFA研究グループのレポートに興味深い記述がある。
―――「今大会でのオランダのサッカーは50年代のマジックマジャールと言われたハンガリーと同じやり方で
ゴール前にスペースを作り出し、センタリングや縦パスをスピードに乗ったアタッカーのあわせていた。」―――
トータルフットボールにおいてもハンガリー同様、マンマークのディフェンダーを計画的に引き出す動きを繰り返していたことが
このレポートからもわかる。
- ■3-5-2システムにおけるWBのモビリティー
瀧井氏は著書の中でウィングバック(WB)の攻撃参加についてこう述べている。
―――「3-5-2システムは戦略史上もっともダイナミックなモビリティーが計画されたシステムであると言える。
このモビリティーはマンツーマンディフェンスを採用したサッカーには特に効果的であった。」―――
突然だが、何故このポジションの名称はウィングバックなのだろうか?
ウィング(W)とはFWの名称である。
対してバック(B)とはDFのことである。
中盤に位置する選手は大抵ハーフ(H)と呼ばれている。
これは図らずも初期のWBというポジションの役割や誕生の経緯を現している。
すなわち守備時には相手のサイドの選手をバックスの一員としてマークし、
攻撃時には一転してサイドを素早く駆け上がり、数的優位を作り出すウィングプレーヤーに変わるのだ。
現在ではWBは中盤の一員といった印象だが、初期においてそういう想定がなされていなかったことがわかる。
そしてこれはWBを含む3−5−2システムに、モビリティーを生み出すための戦略的な狙いがあったことをも示している。
モビリティー(瀧井氏はモビリティーを「攻撃の活動性」としている)の”質”と”量”は攻撃の”幅”と”厚み”に例えられる。
3-5-2の登場によりダイナミックなモビリティーが登場するようになったことで、サッカーは攻撃的な特性が増したといえる。
しかしWBに代表されるモダンポジションと3−5−2システム自体が持つ致命的で構造的な問題が、
現代サッカーにゾーンマーキングへの傾斜からコンパクトサッカーという道を歩ませることになる。
- ■ゾーンディフェンスへの傾斜
84年に来日したFIFA選任コーチのM.マロッケ氏(ミケルス、オシム、ベルデニックらもかつてこの職についていた)は、
アルゼンチンとヨーロッパで行われているマンツーマンマーキング、
つまり3−5−2システムにおける3バックの守備に関する新たな考え方として次のような項目を挙げている。
1、守備の構成は「2人のストッパーと1人のリベロ」で構成する。
2、マンマーカーは原則的にマークの受け渡しを行わないクローズドマーキングを行う。
(※closed marking=閉じられたマーキング=密着マーク)
3、中盤における守備はスペースマーキングとする。
しかしこれらの項目に対し、瀧井氏は著書の中で「この講和には見落とされている議論があった」と述べている。
―――「WBの積極的な攻撃参加に焦点が当てられ、そのために生じる守備のバランスに関わる問題についての議論がほとんどおこらなかった。
後ろの3人のDFがWBと連携が図れず、相手FWの動きのために孤立してしまうことになる。これでは理論的に無理がある。」―――
というのもストッパーがクローズドマーキングに忠実であればあるほど、
DFのポジショニングがFWの動きに支配されてしまい、先のマジックマジャールのように意図的なポジションチェンジの罠にはまるであろうことを指摘している。
例えば相手の2トップがDFのバランスを崩すために行うスペース作りのためのポジションスライドについて、
以下のようないくつかのシチュエーションに分けて実例を紹介している。
1、ボールサイドに寄る
2、縦に分散する
3、横に分散する
4、中央で集中する
これらのポジショニングによって生じたスペースやDFバランスの悪化に対する解決策は、次項で述べることにする。
- ■3-5-2システムの構造的欠陥
4バック戦術が一般的な中、3バックの採用により通常状態での中盤の人数が増加していく。
80年代前半までの中盤は6人ほどで構成されていたのだが、80年代後半に入るとその数は9〜10人と飛躍的に密度が高まった。
それと同時にFWとDFを結ぶ前後のラインの間隔が狭まったのもこの時期の特徴だ。
30〜40mの距離にプレーヤーは密集し、非常に強いプレッシャーの中でプレーが展開されるようになる。
プレーエリアが急激に縮まった背景には、中盤の数的密度の増加によって攻撃のサポートと奪取のスピードを速めるという新たな流れが生み出されたことが大きく影響している。
プレッシャーを強めるために、より効率良くプレーエリアを狭められる”DFラインの押上げ”の方法が用いられたのだ。
全体の背景としてのDFラインの押し上げはに対して、3−5−2システムは構造的欠陥を補うためには、
必然的にそういう道を辿らざるを得なかったことがわかる。
その構造的欠陥とは具体的に次のものが挙げられる。
1、DF陣の深いポジショニングにより中盤から引き剥がされる
・DFの3人が単独のグループとして孤立し、ペアやトリオによる組織的ディフェンスを行えない
・V字のダイアゴラルラインを発生させ、サイドに大きなスペースを生む
2、サイドスペースの拡大によりWBのモビリティーを損う
DF陣がクローズドマーキングをしているためにサイドスペースは基本的にWBが埋めることになるのだが、
対面するプレーヤーに対する守備を考える場合、本来WBが持つ攻撃的なモビリティーが損なわれてしまう。
実は上記の問題は4バックによる深いダイアゴナルラインにおいても生じる。
86年FIFAオフィシャルレポートでは、ボールが両サイドにある場合のゾーンマーキング(つまり4バックによるディフェンス)について、
ディフェンダーがお互いの背後をカバーしあえるようにマーシャリング(ダイアゴナルライン)を引くと報告している。
ディフェンスを押し上げることはこれら余分なスペースを消すために必要不可欠なものだ。
WBの守備的負担を軽くすることで、その分だけ攻撃に厚みを生み、またボールを失った後にも直ちに守備の厚みを形成できる。
しかしながらDFがクローズドマーキングを続ける限り根本的な解決策とは成り得ない。
なぜなら前後が50m〜60mにもなるルーズなサッカーではプレーヤー間の協力関係が成り立たず、
ディフェンスラインの3人が孤立してペアとトリオなど複数人が連動した組織的ディフェンスが困難になるためだ。
- ■DFラインの押上げに伴なう問題
サッカーにおける守備の目的とは一体なんであろう?
瀧井氏によればディフェンスの目的は以下の3項目に集約している。
1、自軍のゴールを守ること
2、相手のボールを奪うこと
3、相手のプレーを規制すること
ディフェンスラインを押し上げること自体にはリスクを伴うが、だからといってリスク=欠点とはならない。
つまりリスクを欠点とさせないための対策を講じれば、それは欠点とは為り得ない。
そのために必要な事柄として以下の3点を挙げている。
1、スペースを消すこと(相手に利用させないこと)
2、アドバンテージスペースとして保つこと
・前線からのフォアチェックによりノーマンズランドにパスを出させない
3、状況に応じてフォーリンバック(ディフェンスラインを自陣深くまで後退させる)を用いる
これらのことを忠実に守ればディフェンスを押し上げることが大きな欠点とは成り得ないのだ。
だが一方でディフェンスの押上げに伴なうマンマークディフェンスの問題も指摘されるようになる。
先に引用した86年ワールドカップのFIFAのレポートではこう述べられている。
―――「マンツーマンマーキングはその重要性を失っている。
実質的な守備の概念としてクローズドマーキングは消失しているが、しかしながらストッパーと特定ポジションの選手へのものでそれはまだ残っている。
マンツーマンマーキングが有効な成果をもたらしておらず、すべてのチームが基本的にゾーンマーキングを行っていた」―――
82年のワールドカップレポートにはこのことについての記載はないが、80年代後半には既にマンマークからゾーンディフェンスへの傾斜が起こっていたと言っていいだろう。
それも当然だ。ディフェンスラインを押上げ、プレーエリアをコンパクトに保つこと自体が、マンマークの原則に大きく反しているからだ。
つまり4バックだろうが、3バックだろうがゾーンディフェンス的な対応が必然的に求められるようになっていたことが、これらのレポートにははっきりと現れている。
特に90年イタリアワールドカップのブラジルは3−5−2を採用しながらも、伝統的な4バックに習った積極的にマークの受け渡しによって3バックによるゾーンディフェンスを行っている。
- 2.ゾーンディフェンスの分類
-
―――「サッカーとは空き地のゲームであり、空き地を有効に支配していれば対応が困難になることはない。
重要なスペースに先回りで守っていれば、相手は遅かれ早かれおのずとそこに到達する。
つまりボールを失ったら速やかに後退できるところまで後退するべきである。」―――
これは4バック誕生初期におけるゾーンディフェンスの考え方を表したものだ。
同じゾーンディフェンスでも、現在我々が認識しているものとはその原理・概念が大きく異なっていることが良くわかるだろう。
このような歴史的な経緯を踏まえ、瀧井氏は現代サッカーにおけるディフェンス戦術を以下の4つのタイプに分類している。
(1)ベイシックタイプ
4バックのディフェンスの古典的なタイプで、相手の攻撃を自陣ゴール前で防ぐという初期のゾーンディフェンスの考え方をそのまま踏襲した守備戦術である。
ディフェンスラインはペナルティーアーク付近までフォーリンバックの状態で下がり、
またアンカープレーヤー(今でいうボランチ)がディフェンスラインの前方中央に位置することで5人がブロックを形成するような布陣をとる。
分類されたディフェンスタイプの中で最も前方への積極性が低く、そのため現代では90分間このこの形でのディフェンスを行うチームを見ることはできない。
(2)ローテーションタイプ
アンカー(ボランチ)とディフェンダーがローテーションするようにカバーリングを行うディフェンスタイプ。
ゾーンディフェンスの原則を生かし、ボールホルダーに最も近いディフェンダーが最初の対応を行ういわゆる「1stディフェンダー」となり、
1stディフェンダーに最も近いディフェンダーが「2ndディフェンダー」となる。
それらの穴埋めをディフェンスライン前方に張りついたアンカーがディフェンスラインに入り、うまくローテーションすることで機能している。
ディフェンスラインの始動はフォーリンバックした状態からではあるのだが、チェック後のカバーリングがダブルアンカーによるローテーションのおかげで非常にスムーズで、
ディフェンスラインからの積極的なボールへのチャレンジを可能にしている。
これは現在のスペインリーグで広く行われているディフェンスタイプである。
(3)ラインタイプ
これはディフェンスラインをミッドフィールダーのすぐ後ろまで前進させるタイプのゾーンディフェンスである。
この守備方法ではライン裏のスペースをアドバンテージスペースとするためにオフサイドトラップが有効な手段である。
ボールへのチャレンジを積極的に行える反面、ディフェンスラインが横一線になるために守備の厚みを生みにくい。
加えてアンカープレーヤーをディフェンスラインの前に置いておくことが難しく、楔のパスから崩されることが多い。
※ラインタイプの説明には若干のエクスキューズが必要である。
この著書が90年代以前のサッカーを元に作られているために、このラインタイプが次に挙げるプレスタイプのディフェンスの過渡的なもの、
あるいはその一部であることは明白である。
なぜならこれを実践したチームは黄金期のリバプールなどがあるのだが、現代的な視点に経ち返るとこれらの組織理論が円環構造をしていないためだ。
(4)プレスタイプ
4つのタイプの中で最も積極的なディフェンス方法である。
ラインの位置はラインタイプと同じであるが、プレスタイプではボールへの志向性が高くボールマーキングを実践している。
また前線から積極的なチャレンジを行うために、ローテーションタイプと同様のカバーリング機構を備えている。
このタイプで有名なのは80年代後半から90年代前半の黄金期のACミランである。
守備はFW、MF、DFの3ラインを形成し、お互いの間に生じるスペースを埋め、FWのフォアチェック、MFのボールマーク、DFのチェックとラインコントロールを
ペアとトリオによる連携を駆使することで完全な組織守備を誇った。
強烈なプレスを仕掛けるために片側のサイドにプレーエリアを圧縮するとともに、
空いた逆サイドへのサイドチェンジをさせないように意識してプレッシングを行った。
これは逆サイドをアドバンテージスペースにしておき、さらにはその空いたスペースにボールを展開するためのスペースとして利用するためである。
そしてこれはN-BOX導入時のジュビロ磐田と全く同様の発想であるのだ。
攻撃と守備の間にニュートラルな状態を作ることのない積極的守備は攻撃に等しいということをこれにより発見し、サッカーに攻守の連続性を生み出した。
WBの上がりなどチームがモビリティーを起こした後のディフェンスの分担はどうするか?を論理的に考えれば、
ボールに最も近いディフェンスがマークにつくというゾーンディフェンの原則事項が見えてくる。
そしてこれは言わずもがなトータルフットボールの原則そのものであるのだ。
ミケルスはトータルフットボールのことを、相手を敵陣に90分間押し込むという理念からプレッシングサッカーと呼んでいたが、
現代サッカーはその守備的な意味においてトータルフットボールと着想を同じくする。
しかしながら、無敵のACミランがどんな相手にも常に高いラインを保っていたかというとそうではない。
相手の攻守の切り替えが早い場合、また力が十分な場合にはプレッシングが機能せずに十分な体勢を整えられない場合もある。
そのため時間帯によってフォーリンバックを行いペナルティーアーク付近までディフェンスを下げさせたのだ。
- ■ダイアゴナルラインとつるべの動き
瀧井氏は著書の中でACミランのダイアゴナルラインによる守備について触れている。
これは3バック同様、相手FWにスペースを与えないためにはそれまで行ってきた深いDFのポジショニングではなく、
浅いポジショニングを取る必要があると解いているのだが、これは論理的に考えれば少々矛盾している。
本当にFWにスペースを与えたくないのならば、ダイアゴナルラインを敷く必要はない。
ダイアゴナルを形成するならば、当然想定されている対応は背後へのカバーリングであって、
それを浅いことでスペースは狭まることは確かであるがこの基本的性質は変わらない。
実はこの論理に最も符合しているのはフラットバック型のディフェンスラインで見られるコペルトゥーラのラインによるカバーであると言っていいだろう。
完璧と思われたACミランの浅いダイアゴナルのディフェンスも、ダイアゴナルからコペルトゥーラへの守備戦術の変遷の中で発生した過渡的な戦術であったと推測される。
- ■最後に
参考文献に挙げたこの瀧井氏の著書はディフェンス組織の歴史的変遷を追うには格好の書籍である。
決して値の張るようなものではないので、ぜひ購入してこの名著を一読していただくことをお薦めする。
- 3.ラインコントロールで相手の攻撃を封じる(奥野僚右のDFセミナー)
-
最後に今月で連載を終了したサッカークリニックの「奥野氏のDFセミナー」というコーナーにDFラインのコントロールについて非常によくまとまった文章が載っていたので紹介する。
トルシエのフラット3と一般的なラインコントロールの違いを改めて認識してほしい。
■ラインコントロールとは?
日本ではおそらくラインコントロールとオフサイドトラップの認識が混同されているように思うが、この二つは実際には別の行為だ。
オフサイドトラップとは相手FWにパスが出る直前に意識的にディフェンスラインを押し上げる行為のこと。
オフサイドトラップは広い意味でラインコントロールと言われるものの延長上にあり、相手のパスコースを限定したりスペースを消したりした結果の1つでしかない。
ラインコントロールの効果は眼に見えにくいが、例えば相手がスペースを見つけられずにバックパスをしたりと地味ではあるが、これも立派な成果だ。
他にもピッチのプレーエリアを狭くすることで、ボールにアプローチしやすくなり、相手は自由にプレーできなくしたりもできる。
■ラインコントロールの範囲
ラインコントロールを行う範囲にも目安がある。
現代ではピッチの広さを約35m(縦の長さおよそ3分の1のエリア)で行うようになっている。
ラインコントロールはその広さを意識しながら行うことになる。
ラインの上限はセンターラインである。
これはオフサイドルールがセンターラインから自陣側でしか発生しないこと、またDFとGKとの距離も離れすぎるてしまうためでもある。
ラインの下限はペナルティーアークだ。
直感的にはペナルティーエリアの中でゴールに蓋をするほうがいいのではないかと感じるかもしれないが、実際は逆だ。
なぜならペナルティーエリアの中にDFが多くいるとGKの視界を塞いでしまうばかりか、GKのセービングに必要なプレーの空間をなくしてしまうのだ。
人が多すぎてクリアもしにくい、味方との連携もしづらくなってしまい個人個人で対応する必要が出てくる。
今度サッカーを観戦の際にはディフェンスラインがどこまで下がっているかに注目して見てほしい。
■ラインコントロールの目安
次にラインコントロールを行う際の基準について述べることにする。
まずラインを押し上げるときは相手が背中を向けているときとボールをバックしたときで、ラインはボールと同じ距離だけ上げるようにする。
基本的にボールを持っている相手が前を向いているときにディフェンスラインを上げてはならない。
逆にラインコントロールで最もやってはいけないのが、相手を恐れて、あるいは相手の勢いに負けてズルズルと一方的に下がってしまうことだ。
ディフェンスラインはどんな状況であっても、チャンスがあれば冷静にラインを押し上げる必要がある。
ラインを1m上げても状況は変わらないように感じるかもしれない。
またせっかく2m押し上げてもまた2m押し下げられるかもしれない。
だがそうしたこまめなライン操作を試合中、我慢して続けていけば必ず実を結ぶ。
相手に押し込まれて苦しいときこそ、こういった地味な汗かきが大事なのだ。
相手が10mボールを下げたら、こちらも10mラインを上げるようにする。
もちろん肉低的にはかなり辛い作業であるのだが、ここでがんばれば状況は大きく好転する。
■ディフェンスラインと中盤の距離の関係
ディフェンスラインのコントロールは当然中盤との距離にも常に気を配る必要がある。
ラインコントロールがうまくいかず間延びしているときは、ボランチがディフェンスラインに吸収されているような形になってしまい、
相手から見て中盤の高い位置に広いスペース(バイタルエリア)が生じやすい。
具体的にはディフェンスラインとボランチの距離が5〜7mくらいが最も中途半端な距離で、誰がプレッシャーをかけ、誰がスペースをケアするのか役割があやふやになる。
結果足が止まり、十分な人数がいるにもかかわらず全員ボールウォッチャーになってしまい好き放題やられてしまう。
こういってときはまず下がり過ぎたボランチにディフェンスラインから指示を出し、ラインから10m〜12m前方の位置までポジションを上げさせる。
それと同時にディフェンスラインは少なくとも今の位置よりも下がらないようにラインを踏みとどまらせる必要がある。
そして相手が少しでもボールを下げれば、躊躇せずにラインを上げるようにするのだ。
■柔軟なラインの対応
ラインコは何も常に一直線である必要はない。
ディフェンスラインは生き物であり、状況に応じてフレキシブルに"しなる"ことも重要だ。
サイドから攻め込まれるときは逆サイドのサイドバックが最も状況が見えているために、通常CBが行うラインコントロールをSBが担当する必要がある。
試合中に上手に休むことも効果的なラインコントロールの要素の1つだ。
前述のようにラインコントロールを厳密に行うには非常に体力を消耗するため、それを統率する選手は味方の疲労度を考えながら休むべきときには休ませる必要が出てくる。
例えば、味方にボールがわたっても、すぐに相手が攻め込めそうにないと判断したときにはディフェンスラインに「上がるな!」
そして時には「下がれ!」と指示し、「今は休めと言うことだ」ということを周囲に理解させる必要がある。
FWが疲れて守備の戻りが遅くなってきたときには、逆に「下がるな!」とか「ここで踏ん張れ」とDFに指示を出し、FWの負担を出来るだけ軽くするようにする。
どのような戦術にも長所と短所があり、それを理解したうえでどのような戦術を採用するかを決めるのは指導者自身の信念やサッカー感による。
上手なラインコントロールとはディフェンスラインだけで完結するものではない。
11人が有機的に連動して初めて機能するものだということを覚えておいてもらいたい。
<seri>