第4回 : 「3top」「4-2-3-1」システムの概要
■各システムの凡例と解説
(0)ポジションの名称
(1)4-3-3 FLAT LINE
(2)4-3-3 Total Football
(3)3-4-3 DIAMOND
(4)3-4-3 BARCELONA
(5)3-4-3 AJAX
(6)3-4-3 ARGENTINA
(7)4-2-3-1 REAL MADRID
(8)4-2-3-1 REAL BETIS

コラム : 「無意味なシステム論」

■各システムの凡例と解説
(0)ポジションの名称
FW
CF
WG
= センターフォワード
= ウィング
MF OH
SH(WB)
DH(volante)
CH
= オフェンシブハーフ
= サイドハーフ(ウィングバック)
= ディフェンシブハーフ(ボランチ)
= センターハーフ
DF CB(stopper)
SB
SW
LIB
= センターバック(ストッパー)
= サイドバック
= スイーパー
= リベロ

(1)4-3-3 FLAT LINE
4-3-3システムの発祥はブラジルと言われ、4-2-4システムの変形として生まれたものだ。

現在では南米やオランダナショナルチームを中心に、 それらの流れをくむアヤックスなどのオランダの国内クラブ・ バルセロナなどオランダ関係者が多く関わった国外のクラブなどで広く用いられている。

攻撃面での主な特徴は、ピッチに均等に配された選手を生かして展開するボール支配率の高いパスサッカーだ。 そのため全般的に選手はテクニックに優れ、中盤の人数が少なくてもパス回しに支障はない。 足元でつなぐ速いスピードで展開されるショートパスでかき回すか、WGの突破力を生かしてサイドから崩していくかのどちらかで、 そのためWGやCFには非常に優秀な選手が置かれる事が多い。反面、繋ぐことを意識するあまりパスのリズムが一定になってしまい、 試合が進むにつれて相手が慣れてしまうという欠点がある。

守備時には中盤の人数が少ないことから当然相手にサイド側にスペースを与えることになるのだが、 通常は試合を支配して相手の攻撃機会を与えないか、又はSBが高めに位置してそのスペースをケアするなどの方法で対応している。 高い位置にSBがいるということは当然ボール回しも容易になり、ボールポゼッションは高まる要因の一つになっている。 そのため攻めにかかっている場合にCB2人だけを残した2バック状態になることも珍しくない。


(2)4-3-3 Total Football
4-3-3システムを用いてサッカーに革命的な戦術を持ちこんだのがこのとき1974年のオランダ代表とアヤックスだった。

それまでのオランダ代表は欧州の中で注目されるような国ではなかったが、 ほとんどのメンバーがミケルス監督のもとで既にトータルフットボールのメソッドを導入していたアヤックス所属だったために 当時のオランダ代表はその方法論の紹介役という意味合いが強い。

高く保たれたDFラインと前線から中盤にかけてのプレッシング理論により試合全体を支配してしまおう、 という大胆な試みはオランダ人独特の着眼点だった。 加えて攻撃する時間が増えるとともにポゼッションを前提としてポジションチェンジなど 現代サッカーへとつながる要素が生み出された。

攻撃時には前線のフリーマンであるクライフの指示(左WGのポジションから指示する場面が多かった)を中心としたボール回しと、 ポジションチェンジを繰り返し、守備時にはプレッシングを用いて極めて攻撃的にボールを相手自陣で奪うプレーを繰り返した。

現在オランダがトレセン教育の段階から4-3-3システムを基本とした育成システムを構築していることは非常に有名な話である。


(3)3-4-3 DIAMOND
究極的なまでに攻撃に人数を割いた非常に攻撃的なシステムがこの3-4-3システムである。

4-3-3システム同様に、これも3トップシステムを採用する国やクラブでよく使われるシステムで基本的なコンセプトは4-3-3と変わらないのだが、 攻撃時には中盤の両サイドが起点となりつつ、WGを追い越す動きも出来るために4-3-3よりもサイド攻撃が有効になっている。 このシステムで特に難しいのがOHのポジションで、ただ能力のある選手を置いても機能させることが出来ない。 このポジションの代表的な選手にはリトマネンやベルカンプなどがおり、 テクニックとセンスと得点力と球離れの良さをも併せ持った選手でしか務めることが難しい。

守備時のディフェンスの脆さもあり、実際には4-3-3システムの方がより多く使われている。


(4)3-4-3 BARCELONA
現役時代にアヤックスに所属しオランダ代表として活躍した天才クライフが監督として率いたのが1993年のバルセロナだった。

ただでさえ攻撃に寄った4-3-3システムに攻撃的な3バックを最初に導入したのも彼だった。
クライフはミケルスのあみ出した4-3-3によるトータルフットボールをより洗練した形で実践すべく、 攻撃にできるだけ多くの人数を割けるよう3-4-3システムを採用した。 3バックも単なる3バックではなく、味方の攻撃時には大きく両サイドに開くことでそこを攻撃の起点とした。 またリベロのクーマンはその正確過ぎるほどのフィードキックやミドルシュートを駆使し、攻撃サッカーの象徴的存在となっていた。

とにもかくにも超ハイレベルなテクニック集団のポゼッション能力と比類な得点力はこの年のチャンピオンズカップを制するほどのものであったが、 クライフが在籍した5年間の中でこの大会を制したの1回のみで後の4年間はパッとしない成績に終始している。 ちなみにバルセロナのチャンピオンズリーグでの欧州NO.1の称号は、後にも先にもこの一回のみである。 スペクタクルな試合も多いものの安定性の欠如という問題を抱えており、国内での成績があまり良くないのも戦術的な幾つかの問題を抱えていたことの表れでもある。


(5)3-4-3 AJAX
オランダの名門アヤックスがファンハール監督を迎えて作り出したのがバルセロナ同様3-4-3システムを用いたチームだった。

前述の3-4-3システムの特徴を捉えながらも若手の才能ある選手が多く在籍していたことも幸いして組織的な攻撃力を生かしての ファンハールの独特の方法論による戦術がシステマティックに機能する3-4-3を生み出した。

常に6割を超える圧倒的な支配率と90分間常に攻撃しつづけ圧倒的は力を誇りながらも、チームのマンネリ化と選手の流出を防げずに チームが自然崩壊してしまった。


(6)3-4-3 ARGENTINA
2002年ワールドカップの予選から本選にかけて見せたのが、アルゼンチンの3-3-1-3システムだ。

世界最高のタレント集団により爆発的な攻撃力を持ったチームを作った監督のハビエル・ビエルサは趣味は サッカービデオの観賞という生粋のサッカーマニアであると同じにトータルフットボールの信奉者の1人だ。

3トップの弱点であるスペース不足による攻撃の停滞とリズムチェンジの難しさを、 ドリブルに特徴を持つオルテガという強い個性を使い切ることで解消することにより成功した。

オルテガはWGというよりもサイドに張り出したOHといった感じで、 シンプルにボールがまわる中でも1人ドリブルによる突破を頻繁に繰り返す。 だがこのドリブルが結果的に前線のタメを生み、ポジションチェンジやサイドの上がりをうながしていた。 ビエルサの選手の個性まで計算した緻密なチーム作りは、ともすればチームにマイナスに作用しかねないオルテガを攻撃のリズムを 変えることのできる”スイッチャー”へと変化させた。

その一方で攻撃全体のコーディネートはベロンの組み立てとそこからのロングパスやサイドチェンジ、 さらに"切り札"として前線の攻撃が停滞したときのソリンの飛び出しという攻撃オプションまで用意するあたりも、 ビエルサがかなり自覚的にトータルフットボールの戦術を使っており、その弱点をカバーしようとしていたことがわかる。

ただ2002年ワールドカップでは、3トップシステムとそのオルテガにこだわり過ぎたことがかえって仇となり、 優勝候補最有力と言われながらも戦術が停滞したまま予選敗退という憂き目を見ている。


(7)4-2-3-1 REAL MADRID
現在スペインリーグのクラブを中心に流行しているのが4-2-3-1と呼ばれるシステムである。

その走りと言えるのが2000-01シーズンのレアルマドリードである。
慢性的なFW不足からワントップの戦術を用いたこの年のシーズン、 ライバルチームのバルセロナから世界最高峰のサイドアタッカーであるフィーゴを獲得するなど ユーティリティーな選手が中盤に揃うと、流動的なポジションチェンジと左はRカルロス、右はフィーゴからの攻撃が面白いように決まった。

特にワントップの動きを囮にしたラウルの抜群のポジションニングと、 その飛び出しに合わせるフィーゴのピンポイントクロスのパターンだけで多くの得点を生み出した。 左サイドのR・カルロスの驚異的なオーバーラップを引き出すような特徴的な前線の動きは、 エルゲラのカバーリングも含めてスピード感に欠ける前線の走力を補って余りあるものがあった。


(8)4-2-3-1 REAL BETIS
前述のレアル・マドリードが主に中盤の構成力を生かすタイプの4-2-3-1システムである。 同タイプにはバレンシアやラコルーニャなどの強豪が名を連ねている。

一方、スペインで一般によく用いられているのがサイドの突破力を生かした4-2-3-1システムだ。 ここで紹介するベティスなどの中堅クラスのクラブで広く用いられている。

特徴的な動きとしてはサイドの突破力と生かした早い仕掛けのカウンター攻撃とSHのほとんどFWに近い前線への飛び出しだ。 特にベティスではサイドの突破力を有するSHを両サイドに配置しており、更に積極的に一対一を仕掛けていく。 また中盤では高い身体能力とフィジカルコンタクトでアスンソン、ホアキンなどを中心に激しくプレッシングをかけている。

■コラム : 「無意味なシステム論」
全4回に渡って続いたこのシリーズもこれが最後となる。

幾多のチームを紹介してきたが、もちろん紹介しきれなかったチームもある。
それを決めるに当たって選定基準となったのが以下の3項目だ。
・「強く、且つ結果を残した戦術」
・「システムの効果が機能的に発揮された戦術」
・「歴史的に意義のある戦術」
この条項はともすれば形だけにとらわれてしまうシステム論を、より厳密にその機能性との関連を推し量れるようにするための大前提だ。

もちろん紹介しなかったものの中には、今後追及していけば面白いと思われる”形”もあった。
4-1-4-1や2-4-4など一部のクラブで一時的に採用された形は上記の項目に該当しないため、ここでの紹介は避けた。 なぜならこれらの”形”はその中身、約束事や戦術の機能性を歴史的に検証受けたとは言えず、本質的な意味での"システム"とは呼べないからだ。 もしこの過程を省いてしまったなら、サッカーのシステムは"形"をなぞるだけでどうにでもなってしまうだろう。

”形”だけで全てを語ろうとする者の影響で、システム論が"システムとは意味のないもの"と否定されてしまう事が多い。 それは本来のシステムが持つ機能性が検証されないままずに”システム論”自体が意味の無いものとする風潮が世間に出来つつあるのは非常に解せない。

”形”だけで全てを語ることは極めて危険だ。
例えば「3-5-2で中盤を厚くすればプレスが効くはずだ」とするのは、「君は身長が高いからバスケットが得意のはずだ」と言っているのと何も変わらない。 これでは説得力が無いのは当たり前だ。
やはり本来は"形"と"機能性"とがシステマティックに結びついて初めて"システム"と言えるはずだ。

「何をしたいか?」という基本的なコンセプトに一番のプライオリティーを置くことで、 初めてシステム毎にステレオタイプにカテゴライズする意義が出てくる。 実際”形”に着目してチームを分類すると「4-4-2はこうなるようだ」「3-5-2でこうなりそうだ」といったように、 システム毎による傾向というものが出て来ていたのが理解していただけただろう。 もちろんそれが絶対的なものではないことまで含めての話だ。

現代では「こうしたいのだから、3-5-2ではなく4-4-2の方がいいだろう」といった具合に、 歴史的検証を終えたシステムの傾向というものを逆に利用する監督まで現れ始めているほどだ。 現代サッカーでこれだけ戦術やシステム自体が自覚的に使われるようになったということは、 昔のように”形”そのものの優先順位は低くなっており”何がしたいか?”の方に重きが置かれているとも言える。 その傾向がシステム不用論に拍車をかけているのだが、ではだからといって上記のシステムによる傾向が消えたわけではなく、 上記のようなシステムの効能を十二分に認識する必要がある。

またシステムと戦術の結び付きを示す出来事として”戦術の継承”が起きた場合にそれを見ることが出来る。

監督が交代して前のチームを後任が引き継ぐ際には、 チーム内での戦術的な約束事の多くをシステムと同時にそっくり引き継ぐことがよくある。 そうするのも約束事を再構築するのにかかるタイムラグの間、チームが戦術を消化しきれずに無防備となってしまうために他ならない。 シーズン中であれば尚更のことだ。

このことはシステムや戦術は積み上げを必要とするものだとこうことをよく現しており、 逆に言えば約束事の構築には監督や選手同士でのやり取りを含めたそれだけの時間がいるのだ。 ”形”をこうすれば良くなるとか、一時的にとか、実質的にとかの”形”で解決するような即物的なものではない。 これはシステムによる”効能”とプレスやカウンターなどの”戦術”が厳密に結びついていることを示す例のほんの一端でしかない。

アルゼンチンの名将メノッティはこう言っている。
「サッカーが進歩するのではなく、サッカーをする人間が進歩するのだ。」
サッカーは時代が進むにつれて戦術的になっていくが、最終的には選手の能力の向上がサッカーを飛躍させる。
つまり戦術は選手の後から進歩するのだと・・・

<seri>
■各システムの凡例と解説
(0)ポジションの名称
(1)4-3-3 FLAT LINE
(2)4-3-3 Total Football
(3)3-4-3 DIAMOND
(4)3-4-3 BARCELONA
(5)3-4-3 AJAX
(6)3-4-3 ARGENTINA
(7)4-2-3-1 REAL MADRID
(8)4-2-3-1 REAL BETIS

コラム : 「無意味なシステム論」