- ■TVの前の戦術論〜日本−トルコ戦分析〜
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「世間では戦術論が花盛りだが・・・」
これは、前日本代表監督でNHKのW杯コメンテーターである岡田武史氏がしきりに枕詞として使ったフレーズである。この後に続く・・・の部分にはメンタル面の大切さやコンディション、他サッカーにかかわる様々な要因が入るのだが、つまりは【血の通わない冷静な戦術論】には好感が持てないのであろう。
岡田氏の場合は、氏の「1対1の積み重ねがサッカー」というサッカー観による部分もあるが、それ以外に今まで日本サッカーに尽力してきた人物として、W杯予選突破と言う大変な偉業を前にして、監督の采配や戦術論をしたり顔で語る様はひどく軽薄に映るのだろう。
日本サッカー不遇の時代からサッカーを見つづけてきた人は、大なり小なりこの【岡田氏の心情】に近いものをもっているのではないだろうか。また、サッカー初心者についても専門的でない分、共感を呼ぶ考え方かもしれない。
しかし、心情はわかるが、今後について考えると詳細なゲーム分析が少ないことはマイナスでしかない。また、ビックゲームになればなるほど分析がサッカーから離れてしまう状況は好ましくないだろう。
前置きが長くなったが、私がこれから書くものは、TVの前から見た日本−トルコ戦についてだ。TV観戦と言うことで、会場の雰囲気、選手の状態など生の詳細な情報はわからない。よって、内容は【戦術論】が中心の表面的なもので、ピッチで起こっていることのほんの一部分でしかないことは自覚している。
■スターティングメンバ−
【起用の意図】
アレックスのドリブルやクロスは、日本には無い武器で攻撃に変化をつける意味で魅力的であるが、残念ながら国際レヴェルのチームに研究されると威力が半減してしまう。しかし、コスタリカ戦の活躍からもわかるように「研究されていない状況」で「守備に甘さがあるチーム相手」だと通用する。そう言った意味では、今回のトルコ戦は、彼を起用するにはうってつけの舞台といえるかもしれない。
ただ、アレックスの守備の不安定さと戦術的理解度の低さは、やはり苦しかった。そのため、守備的にも重要なポジションである左サイドハーフを先発から任せることが出来ず、左SHには、今まで通り小野入り、ウイング気味の左OMFにアレックスという変則的な起用にならざるを得なかった。
西沢の起用は、アレックス先発の関係からだろう。アレックスを先発から使うと、以上のような理由で、どうしても1トップにならざるを得ない。現状で1トップを任せられる人材としては、西沢が最も適任であるだろう。これはトルシエとしては珍しく「アレックス起用する」というところから始まって、それに合わせてシステムを決めていくというプロセスを踏んでいる。
【結果検証】
結局、前半の攻撃が戦術的に有効に機能したとは言いがたかった。これはやはりアレックスの問題が大きい。変則的な起用のためにアレックス自身、ポジションニングに迷いが見られ、結局いつものサイドに張る形を繰り返していた。このため、小野の前方のスペースを消し、小野が今まで見せていた「ボールを落ち着ける」プレーがなりを潜めた。
また、アレックスのポジショニングは、攻撃全体の歯車を微妙に狂わせた。結果「小野、明神の両サイドとも後ろに重心が掛かってしまった」「チーム全体のコンビネーションの不備から稲本の上がりの回数が少なかった」「1トップだったので常時前線にいる選手の人数が少なかった」などの理由から攻撃に人数をかけることが難しかった。人数をかけられないと選手同士の距離が開き、近い距離でこそのプレーであるワンツーやスルーが難しくなる。どうしても単調な攻撃になってしまうことはやも得ないだろう。
■選手交代
【交代の意図】
前半は「人数がかけられず、単調な攻撃にならざるを得なかった」という問題があった。それを考えると、アレックス→鈴木と言う交代は納得がいく。2トップにして攻撃の人数を増やし、同時に左サイド前方のスペースを開放し、小野の攻撃参加を促す意図だろう。
もう一つの稲本→市川の交代の意図を紐解くには、チュニジア戦を振りかえなければならない。結論から言うと、この交代の意図は中田英を最大限に生かすためだ。チュニジア戦、中田英は後半の活躍によってマンオブザマッチに輝いた。その時、行われた交代が稲本→市川だ。これにより右サイドの明神をボランチに回し、戸田、明神という2人の守備的なボランチを並べることになる。私は、市川を入れたことそれ自体よりもこの2人に中盤の底を固めさせることが、トルシエの交代意図なのではないかと考えている。
守備的な選手を2人並べることによって、一見攻撃力が下がりそうに見えるが、「中田英を生かす」ことのみに特化した布陣なので、単純にそうとは言えない。
中田の守備の負担が減り比較的自由なポジションでボールを触ってリズムに乗ることが出来、守備的な選手同士のため2人の守備ブロック自体も比較的低めに形成され、中盤に中田が動き回れるスペースも発生する。また、彼ら2人はシンプルにボールを回すので、ボールに触る回数を増やしたい中田には好都合だろう。
【結果検証】
2トップにして攻撃の人数を増やす意図だったが、鈴木がボールサイドに引いてくるため、実質1トップに近い形になりゴール前の勝負時に人数が足りない場面が多々見られた。特に左利きということで左サイド側よりに引いてボールの引出しを行うため、左サイドの縦のスペースを消すことになり、結果的に前半と戦術的な機能に差は見られなかった。
前半アレックスがスペースを消して、放り込みで攻撃が単調になったのと同様に、鈴木が引きすぎることによってスペースを消し、市川のアーリークロスで攻撃が単調になるという悪循環からついには抜け出せなかった。
中田英に関しても、パスの受け手の不足がたたった。チュニジア戦では森島、市川とスルーパスのコースが2つあったが、トルコ戦は、実質市川のみだった。中盤に動き回るスペースを作れていて、実際良くボールにも触っていたので、パスコースさえあれば突破口を開けたかもしれない。しかし、引いてくるであろうトルコに対して、市川からのクロスボールを高さのある西沢、鈴木の2トップに合わせるというビハインドチームのオーソドックスな戦略も同時に試みていたので、非常に難しい状況だったことは考慮するべきだろう。
(GAITI)