日本代表タクティクスレポート(3)

■意図しなかった『カウンタースタイル』〜アジア大会〜
前回のアジア大会は、中村、小野、稲本など俗に言う「黄金世代」の選手を擁しながら決勝トーナメント進出はならなかった。アジア大会で好成績を残すことは「狭間の世代」と揶揄されることの多い現代表にとってはその評価を覆す絶好のチャンスに他ならない。モチベーションも高く本大会に挑んだ日本は上の世代も混じった中、見事準優勝と言う結果を残した。

今大会日本代表は、攻撃の組み立てやロングキックの精度の高い青木や阿部などボランチタイプの選手をセンターに配置した3バックシステムを基本ベースに戦った。これはツーロン国際大会の阿部のポジションをそのままリベロとして1つ下げた形ということが出来る。これには、もちろん青木が高校時代までCBをやっていたことや阿部の非常に高い対人守備能力も考慮してのことであるが、本質は前回のツーロン方式の弱点である4バック(2バック)から3バックへの移行の問題を改善するためだと思われる。

前回も書いたが、ツーロンではSBが上がったとき4バックから3バックに移行するような変則的なシステムを採用した。この場合、見方によっては2バックで1トップという極端に中盤が厚い布陣と言うことも出来る。これによってパスの“出どこ”に厳しいプレスをかけることが可能になるが、逆に言えばそこでプレスなどで最低でも攻撃を遅らせることが必要になってくるとも言える。選手が戻る時間を稼がなければ、後ろの人数が足りないために決定的なピンチにつながってしまうからだ。

しかし、いくら中盤の密度が高くなったと言っても、フレッシュな前半ならともかく体力がなくなる後半は選手の足も当然鈍ってくる。プレッシングは甘くなり、選手が戻るスピードも遅くなる。そうなると必然的にカウンターに対応することが難しくなり全体が押し込まれた形になってしまう。そう言った意味でこの変則4バックシステムは後半に弱いという明確な弱点を抱えている。それならば、いっそ最初からボランチの1人を3バックのセンターに組み込んでしまい、その形を基本にしてチームを組み立て守備の安定感を増そう、と言う考えだろうが、今大会を見る限りそれは上手くいかなかった言わざるを得ない。

実は今大会、準優勝という結果だけは出たが、完全なリアクションサッカーで、本来目指すサッカーとは程遠い内容だった。前線の3人と他の選手の距離が開いてしまい、攻撃はロングボールを前線に放り込む単調なカウンターが中心で、チーム全体が有機的に絡む攻撃は見られなかった。要するに、このチームの最大の長所であり生命線でもある「中盤の厚み」が完全に失われたのだ。

これは、いくつかの複合的な要因から起きたことである。1つは、まずボランチの問題だ。単純に1枚下がったことにより中盤の人数が減り、中盤での選手間の距離がその分広がってしまった。次にSHに配置された選手(田中、根本)がSB的な選手で縦に上下動するプレーを得意としていることが挙げられる。このようなタイプの選手をSHに配置するとどうしてもチームが押し込まれると、中盤で中に絞り中盤の機能を助けること(つまりはプレスによって“ボールの出どこ”を抑えることなど)よりも、引いてサイドのスペースを埋めるということにプレーのプライオリティーが置かれてしまう。最後の要因は、シャドーの2人(松井、大久保)の組み合わせの問題だ。2人ともアタッカーの要素が強く、高い位置からの守備やボールを引き出す動きが十分ではなかった。松井は時折、中盤が空くとトップ下付近にポジショニングを取り、意識してボールのつなぎ役に徹するなどの工夫が見られたが、もう1人の大久保は完全なアタッカーである。今大会ではチームが押し込まれることが多く、DFラインをそれほど上げられなかったこともあり、前線の3人と後ろの7人の距離が完全に開いてしまう_まるでイタリア代表のような形が良く見られた。

詳しくは後述するが、このような形は本来の臨むところではないので改善する必要がある。SHに例えば明神や酒井などバランス能力の高い選手を配置する、シャドーに山瀬のような守備意識も高く、ボールの引出しもきちんと行う選手を入れるなど、ボランチを下げることも含めてチームのバランスと使う選手の特徴を再度考慮し、またSHやシャドーの組み合わせについてもこれからはより煮詰めていく必要があるように思う。
(GAITI)


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『コンパクトフィールド』による『ポゼッションサッカー』〜今後の課題と展望〜
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