- ■DFラインから見る各国リーグの特徴(スペイン編)(2002/11/03)
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前回までで3バックから見る各国リーグの特徴をまとめました。
次はいよいよ4バック主体のリーグの特徴について触れていこうと思います。
今回取り上げるのは現在、世界最強リーグの呼び声高いスペインのリーガエスパニョーラ。
チャンピオンズリーグなどで毎年好成績を残すチームが多く在籍するリーグですが、
どんな特徴を持っているのか検証してみましょう。
- ■4バックでの守備とは?
4バックでリーグの特徴を語る前に、まず4バックの守備はどういったものなのかを少し説明したいと思います。
4バックはブラジルで考案されたゾーンディフェンスを基本戦術とし、
ヨーロッパのマンマーク守備に対するアンチテーゼとしてそれは出現しました。
ペナルティーエリアまでの地域を4つのゾーンに区切り、そこに侵入した相手選手をマークするというこのゾーンディフェンスは
時にマンマークで生じるDFラインのバランスの悪さを解消すると同時に、ゾーン間でのマークの受け渡しという難題を生み出してしまいました。
しかし後方スペースは一応4人で守ることを基本としているので中盤の助けを3バックほどは必要とはしないなど利点が多い。
ということで3バックほど中盤との連動性をそれほど求められず、中盤以上の選手は比較的攻撃に専念することも出来ます。
現在では完成されたシステムの感がある4バックは、選手配置の位置関係上1対1の場面がどうしても多くなるという特徴があります。
これは理解しやすい一方で、相手との力関係がそのままチーム力の差として露呈しやすいことを示してもいるのです。
同様のシステムを採用したなら強豪チームのほうが圧倒的に有利と言う意味で非常に保守的なシステムとしての側面も持っています。
ではスペインの4バックはどういった特徴を持っているのでしょうか?
実はスペインのそれは前述の4バックの論理とは全く異なる性格を持っているのです。
- ■スペインリーグの特徴
一般的にスペインリーグは非常に攻撃的なリーグとして知られています。
スペインでよく言われている「勝つときも負けるときも美しくあれ」が示すように
「ショートパスとサイド攻撃を主体としたチーム」が多く、とにかく華麗なプレーが頻発するリーグでもあります。
どのチームもアウェーでの勝率が他リーグに比べかなり良いのは、アウェーでも玉砕覚悟で攻撃的にくるチームが多いからに他なりません。
良い意味で選手達はみな思いきりが良く、スペインリーグのゴールシーンダイジェストを見ておくことをおすすめします。
(あなたがDFでなければだが)心が晴れやかになること請け合いのゴールシーンが満載のはずです。
スペインの人気チームはバルセロナ、意外にもレアル・マドリードは国内では圧倒的に嫌われ者です。
人気に比例するかのごとくバルセロナには世界一華麗なプレーが要求され、それを実現すべくDFまで高度なテクニックを持つ選手が集められるのが影響してか
毎年のように守備の問題をシーズン半ばまで引きずり苦しんでいたりもするという状況です。
そんなスペインリーグの印象は、最初は「ガチャガチャしている。」というものでした。
その理由が全然分からなかったのですが、選手の動き方の違いからその謎が徐々に解けてきました。
実はあまりにも見慣れていたためにそれが当然だと思っていたJリーグの守備も代表の守備も共に受動的な守備であったのに対し、
スペインでは能動的な守備がリーグ全体に染み渡っていたのです。
これだけでは何のことを言っているのかよくわからないと思うので、事項で少し詳しく説明しましょう。
- ■守備戦術・方法論の違い
まず両者の特徴を比較してみましょう。
Jリーグなどは例えるなら”網張り型”とも言える「相手のアクションをこちらの守備でからめとるタイプ」で
プレッシングを相手のプレーの方向性を限定するために使いますが、
スペインでは逆に相手のドリブル等の「アクションを起こす前にこちらから仕掛けるタイプ」の積極的な守備であったのです。
しかしこの守備では味方全員が陣形を整える時間がないために一人一人で相手選手にチェックに行かざるを得ません。
例えばこれは日本だとかなりの確率で御法度であります。
何故ならばJではディレイ(簡単に言うと相手をマークしながらもアタックせずに自陣方向に下がりながら時間をかけて守る行為)中心の
守備戦術であるために抜かれないことがある種の前提条件となっていて、そのうち相手はこちらの張った罠にかかるというものだからです。
スペインでは逆に1人でチェックに行き、それが仮にかわされても次々と選手がチャレンジを繰り返すので、
日本では個人の勇み足の印象が強い1人アタックもそれをチーム全体が高い意識で、かつ連続的に行うことで逆にシステマティックに機能していると言えます。
そのような守備のため(大事に至らないという意味で)ドリブルでかわされることが前提となっているので、
選手個々人のカバーリングやチームバランスをとる意識はJリーグとは比較にならないほど高く、またそうでなくてはアッという間に守備が崩壊してしまうのです。
逆に連続的な1人アタックは守備にリズムすら生み、チェック&カバーがスムーズに進行し、それがそのまま攻撃のリズムにつながるという利点まである。
結果的に今のスペインは世界一中盤の寄せが速いリーグとなっているのです。
前述の4バックである理由もそれを行いやすいシステムであるから多くのチームで採用されていると思われます。
4バックをボールホルダーに対するアタック要員の供給場所と位置付けると、マークの空いた選手をチェックしにラインを飛び出しても
後方には残りの3人と飛び出した選手のカバーに入る選手が待ち構えているのでラインのバランスは意外なほど安定しています。
これはJでは鹿島アントラーズ(の良いときにだが)に見ることができます。
鹿島は引き気味のゾーンで守るため完全にスペインのようになるわけではないが、ラインから飛び出す秋田のチェックと中田浩二のカバーなどにそれを見ることが出来ます。
ただこのシンプルで効果的な守備戦術は全員が試合を通じて走り回ることになり、日本国内で同様の守備をすることは気候上おそらく無理だろうと思われます。
選手達がテクニックと走力に優れ、湿度も低いヨーロッパでこそ可能な戦術でしょう。
- ■結論
既に書いたようにスペインリーグは4バックを典型的に実践しているリーグではないのですが、4バックを上手く利用した一風変わった守備戦術を行います。
スペインリーグのサッカー自体、は攻撃的と言うよりもむしろその国民性を象徴するかのごとく”攻守にわたって非常に積極的なサッカー”と言うことが出来ると思います。
例えて言うなら「共通意識的に組織化された個人主義のサッカー」が見られるのは世界中でもここスペインだけです。
これはスペイン独特の民族(クラブ)対立に起因するもの、あるいは土着的伝統意識・共通意識と言うべきか、その華麗なプレーに比べてメンタリティーは「ひどく泥臭い」印象を受けるのも確かです。
4バックでゾーンディフェンスをしながらも、選手の根底に流れる意識は間違いなくヨーロッパ大陸独特のマンマーク的なメンタリティーであるように思うのです。
熱い魂を持ったリーグであるリーガエスパニョーラ。
Jリーグのナイーブな守備に飽きた方はスペインリーグ観戦をどうぞ。
- ■次回予告<シリーズ完結>
Jリーグ、セリエA、スペインリーグを3バック、4バックを交えて見てきたシリーズも次で一応の完結を見ます。
次回はいよいよプレミアリーグ。世界3大リーグの中で最も華やかな印象を受けるこのリーグの特徴はいかなるものか・・・
<seri>
- ■関連リンク
■DFラインから見る各国リーグの特徴(Jリーグ編)
■DFラインから見る各国リーグの特徴(セリエA編)
■DFラインから見る各国リーグの特徴(スペイン編)
■DFラインから見る各国リーグの特徴(プレミア編)<完結>