■「HollandxCZECH(EURO_2004予選)」(2003/04/13)」
■両チームのスターティングフォーメーション
Holland
オランダのフォーメーションは、左からファン・ブロンクホルスト、F・デブール、スタム、リクセンの4バックに中盤は同じく左からゼンデン、ダビッツ、ファン・ボンメル、セードルフ、2トップにファン・ニステルローイ、クライファートというオーソドックスな4−4−2。左SBがゼンデンからファン・ブロンクホルストに変わった以外は親善試合のアルゼンチン戦と同じメンバーだ。(アルゼンチン戦、ボランチに入っていたコクーの故障でゼンデンが左SHにダビッツがボランチに入り、空いた左SBにファン・ブロンクホルスト入った)

オランダの攻撃はこの世界有数の2トップを生かそうというコンセプトは感じたが、いかんせん選手間の連携が悪く、「クライファートに当てて、ファン・ニステルローイに落とす」「カウンター時に2トップを裏に走らせる」「サイドからのアリークロスを2トップに合わせる」といった攻撃パターンしかなく、個人の能力に頼った単調なものだった。しかし、ファン・ブロンクホルストの故障で左SHにファン・デルファールトが入った後はリズムが変わり、得点シーンは、ファン・デルファールト、ダビッツ、ファン・ニステルローイと有機的に絡み可能性のある攻撃を見せた。

だが、後半に入って、対面のポポルスキに押し込まれたことによってファン・デルファールトは消えてしまい。その対応のためダビッツとポジションチェンジを行ったほどだ。同点後、ゼンデンを上げて、3バックにして攻めたてたが、得点の可能性は感じなかった。一方守備は、全盛期のスピードはなくなったとはいえスタムがコラーによく対抗し、ファン・ボンメルも含めてまあまあ安定した出来だった。とはいえ、選手間の距離が開きすぎたことは最終ラインのラインコントロールの甘さも一因で、組織戦術としての完成度はまだまだ低いと言わざるを得ない。

CZECH Rep.
チェコは、左からヤンクロフスキ、ヴォルフ、ウイファルシ、グリゲラの4バック。その前方にアンカーボランチとしてガラゼク、中盤センターのやや低めにドルトムントの10番期待のロシツキ、トップ下に今期絶好調のバロンドール候補ネドベド、左にスミチェル、右にポポルスキ、トップに2mを超えるコラーという敢えて数字にすれば4−1−1−3−1という変則フォーメーション。

攻撃は、コラーに放り込み、そのセカンドボールを2列目のネドベドやスミチェル、ポポルスキが拾うという形が中心で、彼らにきちんとボールが収まると見事なダイレクトパスからの崩しが2,3回見られた。アウエーということで全体が引き気味だったので数は少なかったが、ダイレクトパスからの中央突破や中央へ引きつけてサイドを抜けさせる、といった攻撃パターンはなかなに強力そうだ。特にチェコの両アウトサイドのスミチェル、ポポルスキはチーム戦術にフィットしていて、素晴らしい機能を見せていた。しかし、反面、高いパスセンスを生かしたビルドアップを期待されていたであろうロシツキはゲームから消えていた。自身のコンディションの不良が試合前から伝えられていたので、一概には言えないが、今回のロシツキのようなポジションはディフェンスラインからビルドアップしていくポゼッションサッカーでは有効に働くが、チェコのように“トップに早い”攻撃をするチームではもっとゴール前に飛び込まないとゲームから消えてしまうことになる。

チェコの得点は、ロシツキに変わって入ったミラン・バロシュが混戦を抜け出し、コラーへ折り返し、それをコラーが強引に押し込んだ形だが、ロシツキももう少し前線のプレーに絡んで欲しかった。チェコは、その後スミチェル、コラーと前線の選手を変えていったが、それだけ運動量が多かったことを表している。変わりに入った長身のロクベンツや左SBから一つポジションを上げたヤンクロフスキはシドニー五輪の代表の中心メンバーで、チェコの特にオフェンシブのメンバーは非常に層が厚い。

チェコの守備は前線から中盤でのプレッシングが強力で、高さのあるディフェンス陣はその恩恵を受けて十分に安定していた。特に中盤の守備でガラゼクが効いていて要所で攻撃の目を摘んでいた。今回はアウエーで全体が引き気味だったので、カウンター中心だったが、チェコは組織として高い完成度を誇る好チームという印象を受けた。おそらく、このグループはチェコが1位突破だろう。

■『プレースメント』と『4−4−2』
ビエルサについて書いたコラムでアヤックスのスタイルについて軽くふれたが、アヤックスに限らずオランダでは、一般にプレースメントを意識したサッカーをする傾向にある。プレースメントサッカーの傾向と弊害についてはスポーツナビの西部氏のコラム「小さなオランダ・大きなアヤックス」でわかりやすく述べられているので、是非御一読していただきたい。ここで、西部氏も述べているとおりプレースメントサッカーを指向するオランダの課題として、“ほんの少しテンポを変えられる選手”つまりは“異能者”の存在に攻撃面で依存してしまうことが上げられる。最近のオランダでこの役目を任された選手としてまず上げられるのがベルカンプであるが、彼が代表を引退したことによる攻撃力の低下は著しかった。

オランダのナショナルチームは長年に渡りトータルフットボール以来の伝統として両ウイングを置いた3−4−3フォーメーションを採用してきた。この3−4−3フォーメーションはプレースメントサッカーと大変に相性が良い。というより、個人的にはオランダはトータルフットボールの幻想(ポゼッションフットボールや先鋭性など)に縛られるあまり当時のフォーメーションである3−4−3に固執し、そのことで必然的にプレースメントサッカーというスタイルに行きついたと考えている。トータルフットボール自体にはプレースメントの思想は薄かった。

現在のオランダにはクライファート、ファン・ニステルローイ、ロイ・マッカーイ、ハッセルバインクなど世界有数のCFWを抱えている。しかし、従来の3−4−3では彼らのうち1人しか使えない(ハッセルバインクをトップ下で使ったこともあったが全く機能しなかった)。特にクライファートとファン・ニステルローイを共存させることは近年のオランダ最大の課題であったが、前回W杯の予選敗退の反省もあったのだろう、オランダはついにあれほどこだわったフォーメーションを変えてきた。

この試合、オランダが採用したフォーメーションはオーソドックスな4−4−2で中盤のゼンデン、セードルフのプレーエリアから見ても中盤はフラット型といえるだろう。4−4−2は選手個人の高い総合能力が要求され、そのあたりはフランス選手と並んで総合能力が高い選手が多いオランダには向いている。さらに、2トップにすることによって、CFWが2人配置することが出来、クライファート、ファン・ニステルローイをそれぞれ本来のポジションで共存させることが出来る。しかし、今回オランダが採用した中盤がフラット型の4−4−2はオランダが長年培ってきたプレースメントスタイルと大変相性が悪い。フラット型の4−4−2はイングランド圏や北欧でよく見られる形だが、非常に“縦に早い”スタイルで足元へのパスの頻度は非常に少ない。選手間の角度がないこのフォーメーションでは選手自らが能動的に動いて角度を作り出さなければパスが通らず、それゆえ非常に展開が早いスリリングなサッカーになることが多い。反面、足元のパスが少なすぎて展開が落ち着かないという欠点もある。オランダが今後も4−4−2を採用するのであれば、プレースメントスタイルからの脱却が必要になってくるであろう。

また、プレースメントスタイルは攻撃面で“異能者”の存在に依存してしまうことは上述したが、この4−4−2フラットは“異能者”を使いにくい戦術でもあるのだ。 オランダでベルカンプの後を継ぐファンタジスタとして期待も高いファン・デルファールトだが、中盤左に途中出場したこの試合、前半、特に先制点の場面ではそのポテンシャルを十分に見せてくれた。が、後半は対面のポポルスキに押し込まれ、グリゲラも積極的に上がってきたこともあいまってサイドでの攻防で完全に後手に回ってしまった。最後にはダビッツが左に入り、ポポルスキの対応に当たったほどだ。かといって、中盤センターに入ったときも有効に機能していたとは言えず、もし彼を生かしたいのなら1トップにしてセカンドストライカー気味に入れるほかはないのではないだろうか?

「ファンタジスタ、ファン・デルファールトを如何に機能させるか」
これがプレースメントスタイルが抜けきらないオランダの最大の課題になってくるだろう。従来の3−4−3だろうが、今回の4−4−2だろうが、このこととオランダが抱える豪華なCFW陣を生かすことと両立しない危険性が高い。今後、オランダはファン・デルファールトを取るか、クライファートを取るかで選択を迫られるときがそう遠くなううちに来るだろう。
(GAITI)