■「磐田x横浜(1st開幕戦)」(2003/03/25)」
いよいよJリーグも開幕。
昨年の覇者でありながらいまいち調子の上がらない磐田と、選手とコーチ陣を一新して一躍優勝候補となった横浜Fマリノスがいきなり開幕戦でぶつかる。

まずは先発。
磐田はグラウ、前田、藤田、西、名波、服部、福西、山西、田中、鈴木、山本。 高原が抜け、中山も直前に膝を痛めベンチにも入らず、変わりに前田が開幕スタメンの座に。

対して、横浜は久保、マルキーニョス、奥、佐藤、那須、遠藤、ドゥトラ、松田、中澤、波戸、榎本。 昨年と大きくメンバーが入れ替わったが、一番の変化は岡田監督であろう。要注目である。

■前半戦
まずは横浜。
一番目だったのが佐藤が逆サイドで完全にフリーになることが多いことだ。
これは磐田のNboxシステムの特徴である開いたボランチの内への絞りからくる特徴であり、 これによってプレッシングの密度を上げた磐田は、逆サイドのパスコースも完全に消しつつ、 2年間Jリーグで圧倒的な強さを誇ってきた。

だがこの試合ではそのシステム自体の完成度に既に陰りが見えていることを露呈する。
ジュビロのCB陣はゾーンで守り、サイドの人数の少ない関係上、実はCBの両サイド側へカバーの意識が振られている。

これが裏目に出たのがマリノスの1点目。 中盤でカットして遠藤が持ちこむと3バックの意識はそこからのサイドへのパスに行き、一瞬寄せが遅れた。 そこを遠藤が左足で得意のミドルシュートを放ち先制したのだ。 磐田の集中力の欠如や事故の得点にも見えるが、戦術的な文脈による部分が大きかった。

更に、その直後の磐田の2失点目は特筆に価する。
失点シーンはこうだ。
まずは中盤に下がってボールを前向きに受けたマルキーニョスが後方からのフィードをダイレクトで左サイドに張っていた久保に出した。
(この間、磐田は下がったマルキーニョスの鈴木のマークがずれ、そのカバーをしつつ、久保をオフサイドにかけようとした田中の判断が一瞬遅く、久保が全くのフリーなる。)
加えて、この時の逆サイドを良く見ると大きく開いた磐田の右サイドを佐藤がゴール前に一気に詰めようとしているのが確認できる。

一方、久保は巧みなトラップから1歩目で大きく抜け出しゴール前に迫る。
ここで打たなかったの大問題だが、中に折り返すとDFを振り切って飛びこんだマルキーニョスがシュート、ここはDFが飛び込み何とか押さえられるも全員が横倒しになる間に先ほどから再三フリーになっていた佐藤がゴール前に詰めて楽々とゴール。

(1)ジュビロ磐田 守備時の陣形
磐田の機能しない場合のダメージが倍返しに襲ってくると言うリスキーな戦術の結果である。

だがこの傾向は今に始まったことではない。
2001年セカンドステージ第11節対柏戦でも、磐田は同じ原因から1-3で完敗している。
そのときも集中力と積極性がかけたプレスのかからない試合で、右サイドでフリーになった渡辺光輝にゴールを割られるという 今回の対マリノス戦と全く同じ状況である。 しかも、今回の失点の原因は単に集中力の問題ではなく、 間違いなくチームのバランスが崩れてプレスが効かなくなっているための結果であり、磐田の問題はかなり根深いようだ。

その後も、同様に佐藤のマークがまったくいなく、再三フリーで抜け出されるもオフサイドで事無きを得ている。 ドゥトラのファーサイドの佐藤へのサイドチェンジも逆サイドの守備の甘さを突いた岡田監督の指示であろう。

(2)ジュビロ磐田 攻撃時の陣形
対して磐田のほうも前田の動きが悪く、本来の磐田のFWが使う両サイドのスペースに飛びこんでのポストプレーが出来ておらず、 右のスペースは空いていても前田が走りこまない。 西の方が先に見つけて使ってしまうほどで、これでは磐田の流動的攻撃は生まれない。

このままマリノスのペースで試合は進むかと思いきや、今度は磐田がマリノスの守備のスキを目ざとくついてくる。 磐田の1得点目、中盤で奥に出した窮屈なパスをカットされ、その前田よりも早くスペースを見つけた西が、 今まさにスペースに走りこもうとするドゥトラの裏を突いて遅れて入ってきた前田にプレゼントゴール。

2点目も同じような形で、ドゥトラが上がったスペースをケアしていた松田がGKと連携ミス。 前田の折り返しを藤田がトレゼゲ並の反応でゴールに押しこむ。

(3)横浜マリノス 攻撃時の陣形
前半気になったのは奥のポジションだ。
キャプテンマークまでつける彼には悪いが、完全にゲームから消えていた。
奥のポジションは完全にトップ下であるが左サイドをドゥトラのために大きく空けるよう指示が出ているようで、 プレッシャーの弱い左サイドに流れる動きをしてくれなかった。 おかげでボールの回りが極端に悪くなり前半途中からはFWにロングボールを合わせるような単調な攻撃に終始してしまった。

岡田監督「奥、ボールをもっと動かせ!」
岡田監督「奥、サイドを使え!」
などと再三にわたりボールにからむよう要求している。

奥がゲームに絡めないのは前後のポジションの問題もある。
気が付いたのが奥がまるで名波の様にトリプルボランチの真中のように守備をしている点だ。 はっきりいってこれも岡田監督の狙いで、名波と同じくCH的な役割を彼に期待してのものだろう。 だが引き方も中途半端であり、また攻撃に移ってからの出足の悪さも目立つ。 同じピッチに出足が異常に早い藤田がいたことでその遅さは更に際立っていた。

どういうポジションの選手が、どういう動きと役割だとゲームから消えるのかの典型のような場面だ。

(4)横浜マリノス 守備時の陣形
岡田監督の狙いである左サイドのスペース確保とドゥトラの上がりの促進は、 守備時にそのスペースを埋めるものがいないという点で問題が多かった。

この試合では時折FWのマルキーニョスが下がって守備する以外でこのスペースをケアしたものは誰もいなかった。 それは前半19分の福西のドリブルに対して誰もマークにいけなかったことに象徴されている。 これもあり磐田の2点は薄いゾーンであるマリノスの左サイドから生まれている。
前半終了後、柳下監督は「ボールプレスが上手くいってない。右サイドフリーなのでもっと使うこと。」と言っている。 全くその通りだと思う。福西と西と前田が上手く連携すればもっと簡単に右サイドは崩せるはずだ。 だが前者については今解決できる問題ではないだろうが・・・

■後半戦
前半戦を踏まえて、両チームが微妙な修正をしてきた。

まずはマリノスだが、岡田監督は指示通りにサイドを使うように選手達に意識させていた。
具体的には右サイドの佐藤のタッチの回数を増やすようにボールを集めており、 後半の横浜はこの佐藤を中心に遠藤、マルキーニョスなどが絡むいい攻撃をするようになる。 マリノスの3点目は名波の判断ミスから流し込まれたものだが、 4点目の佐藤のクロスは回りのサポートが効いており、戦術と技術が融合した見事な得点だった。

前半動きの悪かった奥だが、後半は比較的普通にやれていた。
右サイドでは佐藤のサポートに行き、左サイドにも少しは流れてドゥトラの上がりを助け、また守備でも中央でのパスカットが何度か見られた。 しかしまだまだ動き出しが遅くゲームには絡んでいない。
これは岡田監督の指示だけでは解決できない問題かもしれない。

後半、的確にチームを修正してきたマリノスに対し、磐田は全くと言っていいほどいいところがない。 唯一の救いはグラウの故障で入った西野がそれまで前田は何をしていたのか? と思わせるほどFWとしての良い動きと積極性を見せていたことだ。

柳下監督のコメントにある右サイドから崩そうと言う意思も見られず、前半言ったようにCBのサイドへの意識が高すぎロスタイム清水にやすやすと中央突破を許していた。 いくら磐田の戦術が2トップの連携が重要で今日はメンバーがそろわなかったとは言え、今シーズンのチーム力の低下はかなり深刻だ。

■今後の展望
まずはマリノス。
いくら昨年の王者とはいえ、この磐田を倒して調子に乗ってもらっては困る。
DFラインのギャップも大きすぎるし、左サイドの攻撃と守備が完全に機能せず穴と化している。 逆に右サイドの攻撃と守備は今節を見ても分かるように既にかなりの完成度がある。 それゆえに今後右サイドの攻撃に対策を立てられると攻撃が機能しなくなるであろうことは明白だ。 そのときのマリノスのキーマンは左右のサイドをつなぐ奥ということになるだろう。

磐田の今シーズン、特に1stの雲行きは怪しい。
明らかにチームの戦術が機能しておらず、相手が弱ければまだしも混戦必死の今年のJで破られる可能性は極めて高い。 そろそろ戦術の転換期にさしかかっているのかもしれない。

(seri)