J-league division1 2nd stage-12th(2003/11/09)
名古屋グランパス vs 横浜Fマリノス (3-2) @ 豊田スタジアム
<名古屋グランパス スタメン>|<横浜Fマリノス スタメン>
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ウェズレイ | 坂田 マルキーニョス
マルケス |
中村 | 奥 遠藤
中谷 海本 |
滝澤 吉村 | 那須 永山
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古賀 パナディッチ 大森 |ドゥトラ 松田 中澤 ユサンチョル
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楢崎 | 榎本
今回はJリーグ2ndステージ第12節名古屋vs横浜戦をレポートする。
両監督が打った采配により変化していく試合の展開に注目したい。
■両チームの戦い方
名古屋は3-6-1のような布陣。
1トップのウェズレイの近くにマルケスと中村を1.5列目的に置き、ネルシーニョ体勢になってからの変更点である右サイドには国内屈指のスプリンターである海本を配した。
このチームの典型的な戦い方は守備からのカウンターだ。
ディフェンスラインを中心としたフィジカルを生かしたマークの堅い守備でボールを跳ね返し、それを大きなスペースに展開。スプリント能力を生かしてサイドを駆け上がった海本が、ゴール前に詰めた能力の高いウェズレイ、マルケスというFW陣にあわせて決めるというシンプルなサッカー。
対して通常の横浜は4-4-2ボックスの布陣から右サイド中心の攻撃と能力の高いCBに支えられた守備が中心である。
右サイドの佐藤のドリブルとクロス、遠藤の内側からのインナーラップ、波戸(またはユ)のスペースを埋めながらのオーバーラップなどで攻撃を次々と仕掛けるというのが本来のスタイル。それに対して左サイド攻撃は那須がドゥトラの上がったスペースを、奥が那須の下がったスペースをカバーしつつ、前方の空いたスペースを右サイドからのサイドチェンジでドゥトラがモビリティーを生かし大きな波のように攻め上がるというものだ。
しかし今節の横浜は久保と佐藤という攻撃の要をそれぞれ出場停止で欠く苦しい布陣となった。
岡田監督は佐藤の変わりにボランチの遠藤を上げ、遠藤のポジションには好調さをかって永山がボランチとして今季初先発させた。
久保のかわりには準レギュラーの座を勝ち取った年代別代表の坂田が入る。
横浜は佐藤、波戸という右サイド攻守の核を失った状態では従来のような右サイド始動の攻撃を行うことはほとんど不可能。
逆サイドの左を中心とした攻撃を組み立てなければならない苦しい布陣となった。
横浜の左サイドに生じるであろう無理。
この試合、ネルシーニョはそこに罠を仕掛けてきた。
■布石となった右サイドからの仕掛け
F・マリノスのキックオフで試合はスタート。
数日前に張り替えた芝に選手達が足をとられて対応に四苦八苦している中、試合は唐突に動く。
前半12分、名古屋は左コーナーキックからのセカンドボールをパナディッチが折り返し、ファーサイドでフリーになったウェズレイがボレーを決めてゴールを奪う。この先制点を奪えたことでカウンター主体の名古屋のゲームプランはより明確なものになった。
それに対し横浜は思うような攻撃が展開できないながらも、相手守備のスキを突いて得点する。
前半34分にマルキーニョスが前線でタメを作ると、左サイドのドゥトラを逆に囮にしたクロスボールを前線まで上がっていた永山に入れる。ダイレクトのヘディングで永山が落とすと前線に残っていた坂田が完全にフリーとなり、楢崎との1対1を押し込んで同点とした。
前半の戦いで目についたのは横浜の遠藤のポジショニングとユの攻め上がりだ。
この試合遠藤は右サイドでのポジショニングに問題が多く、サイドにベッタリと張るばかりで全く攻撃に絡めていなかったのに加え、RBのユサンチョルがあまりに積極的に攻め上がっていくために、右サイドの裏のケアができずにいた。
横浜の左サイドがあらかじめ想定されたドゥトラの上がりを那須がカバーするプレーを細かく規定しているのに対し、右サイド側にはそういった対応ができていないことを示している。
ただし、もし右サイドが左サイドと同様のロジックで裏のスペースをケアしてしまうと、今度は中盤底のスペースがケアしきれなくなるためバランスが悪いのも事実だ。そもそも両SBがこれほど過剰に攻めあがる必要性というのがないし、ボランチの一角である永山は危険な地域をうろつくマルケスのマークに専念しており、ユのカバーまで手が回らなかった。
前半の横浜は攻守のバランスが悪く、チームとして上手くまわっていない印象だった。
ネルシーニョも戦前からそういった横浜の状況を考慮して、予め対策を練ってきたのだろう。
例えば前半18分や22分のプレー、横浜のボックスのスイッチと中村の動きにネルシーニョの意図がよく表れていた。
<シーン1>
まずはボールを持って上がってくる海本に対応し、ドゥトラが高めの位置で対応する場面で始まる。
ドゥトラがディフェンスラインから張り出していくと同時に、
トップ下の中村が中央からダイアゴナルランにより那須の前を横切って左サイドの裏のスペースに走り込む。
このときのネルシーニョの狙いは2つ。
1つは単純にドゥトラの前向きのディフェンス意識を利用し、左サイド裏にできるであろうスペースを突くための中村への指示、
2つ目は中村の動きに釣られた那須のスペースカバーを利用して、ディフェンスラインの前の大きなスペース発生させ、そこをボランチやマルケスに使わせるというものだ。
しかしこの攻撃では名古屋のボランチのスペース意識の低さと、マルケスをフリーにさせなかった永山の好守備によってネルシーニョの意図通りに破ることができなかった。
<シーン2>
海本は中村と那須の動きを確認してから大きく開いた那須と松田の間のスペース、更には那須の移動する前のスペースを狙って走り込むマルケスにパスをする。
しかし永山はマルケスのケアをしており、その動きにいち早く反応すると、流れの中でディフェンスラインに加わることでスペースの半分を埋めることに成功した。
それと時を同じくして奥が那須の下がった後のスペースカバーをほぼ自動的に行っており、中盤からのマルケスの突破を防いだ。
ちなみにこの奥の動きは横浜における規定演技であり、横浜において低めのポジションに奥が起用される理由のひとつでもある。
このように前半の名古屋の攻撃というのは中村の変則的な動きによる右サイド攻撃に尽きる。
試合後の岡田監督のコメントにはこうある。
「前半、相手がスリートップ気味で、ウチの中盤のディフェンスが乱れていた。」
左サイドの那須とドゥトラのスペースカバーの一瞬の隙、戦術的根幹に関わるこれらの規定演技を逆に名古屋に利用されたことのダメージは大きい。
後半に向け横浜ができることは限られている。
■切り替えられた戦略
「じっとして負けを待つよりは、やれることをやって負けよう」
岡田監督のこういう性格は札幌のサポーターが一番良くわかっているのではないだろうか?
後半、先に動いたのは横浜だった。
岡田監督は「どうしても勝ちたかったので後半から清水を入れて攻撃的にいった。」と言っている。
中盤をダイヤモンドに変えると、永山をFWもMFもできる清水に変えてトップ下に置いた。
奥と遠藤lを両サイドに配して、3トップ気味の布陣ともトリプルボランチの布陣とも言える奇妙な形になった。
だが横浜は先に動いたことが逆に裏目に出てしまったようだ。
ゲームプランが崩れたのは49分、横浜はゴール正面のフリーキックから柳が決めた不意の得点のためだ。
本来のダブルボランチのバランスを崩してまで攻撃的な手を打った岡田監督のゲームプランはこの展開によって台無しになってしまった。今の横浜には常に攻められるようなチーム状態ではないため、リードしてしまった以上はある程度受けに回って試合を進めなければならない。しかし今の布陣で受けに回るには少々バランスを欠いていた。
横浜が勝ち越しゴールをあげた直後の53分、名古屋は機能しない滝澤を変えて岡山を投入する。
ネルシーニョのコメントには「ウチのふたりのボランチは全く攻撃に絡むことができなかった。後半に修正を試みたが、うまくいかなかったので岡山を投入した。」とある。
中村がボランチに下がり、変わりに岡山が前半の中村のポジションに入ると中盤のバランスが良くなり、
前半の中村の役割であった「LBの裏のスペースを突く」という役割を岡山がより効果的にこなせるようになっていた。
名古屋の選手交代以上に横浜にとって深刻だったのは、システムをワンボランチに変更したことで那須がアンカーポジションから動けなくなったこと、加えて永山という前半効いていたはずのマルケスの専属のマーカーがいなくなったことにある。前半を見ても分かるように那須のカバーとダブルボランチがお互いのカバーリングをすることで名古屋の執拗な右サイド裏への攻撃を防いでいたのだが、那須の自由度が下がることで逆にそれが困難になった。
横浜がシステムを変更して前半の状況を乗り切ろうとする一方、仕掛けた方のネルシーニョも横浜の前半の様子を見て後半からは戦略を変えてきた。
それというのも、実は前半に名古屋が右サイドで展開していたメソッドは、左サイドにおいてはより効率的に機能するであろうということ。
つまりネルシーニョが後半に打った新たな手は「ユの左サイド裏にできるスペースを積極的に突いていけ!」
というものだ。そして後半、この指示が見事にはまった。
<シーン3>
前半の中村同様、マルケスの中央からRBの裏へのダイアゴナルランとそれに合わせたスルーパス。
引きずり出された中澤が中央から出てきた頃合を見計らってのセンタリング。
後半に入ると、このパターンプレーが執拗に繰り返された。
ワンボランチではマルケスの素早い動きには対応できない。
だからといってほとんど経験の無いRBの裏のスペースをユには感じ取れない。
横浜はこの時間帯防ぎ様のない攻撃にさらされ、その後の殆どの決定期はこのマルケスの抜出しから生み出される。
問題の松田のファールもこの止めようの無い攻撃の中で起こる。
松田が同じように抜出したマルケスを不注意にも止めてしまい、まずはYC1枚。
そのFKをウェズレイが直接ねじ込み同点となると、直後に中盤でボールを失ってカウンターを受けた横浜は中澤と松田、
ウェズレイとマルケスの2対2のマッチアップの状況を作らされる。
ボールを持ったマルケスの突破に反射的に手を出した松田がまたも決定的なファールを犯して今季何度目かの退場となる。
横浜は1stステージ覇者の意地を見せて鋭いカウンターを見せたものの、時既に遅し。
退場で得たウェズレイのFKやその後のマルケスの1点もののミドルシュートは現在急成長中の榎本(2号の方)が何とか止めていたが、78分に今度は名古屋得意の海本の快速を生かしたカウンターでまたもウェズレイに決められる。
このゴールで試合はほぼ決した。
■試合という生き物
ポイントとなったのはネルシーニョの采配以上に、横浜の戦術の変更だった。
岡田監督の采配の是非を問う前に、確かに横浜の布陣が苦しいのも確かであったろう。
やりくりをする方にとっては大変だが、はたして攻撃的に行くためにダイヤモンドにした岡田の本意はなんだったのか?
おそらく真実はこうだ。
ドゥトラが中盤の守備に引き出されることを防ぐために奥を向かわせること、加えて那須をアンカーに据えることでディフェンスの前のスペースを突かれることを防ぐ。攻撃面では3トップ気味になった前線と奥、遠藤、更にはドゥトラとユのオーバーラップを期待する。
だとすると後半のゲームプランは名古屋には最悪のものだった。
守備的な部分が機能すれば逆に横浜にとっては最高のものだったと言える。
だが、この横浜の守備は機能しなかった。
名古屋が勝てたのには、リスキーなシステム変更によって生じたスキとネルシーニョの采配の妙による。
少々動くのが早かった岡田監督に対し、試合の状況を考慮し、ハーフタイム中に適切な対策を練り、サイドの裏を狙うことに徹したネルシーニョ。
試合という生き物を操る上での監督としての経験の差がハッキリと出てしまったのではないだろうか?
一方で、この試合の戦犯としてファールのやり方の下手な松田を槍玉に挙げる意見が目立つ。
だがはたしてそうだったのだろうか?
復帰戦にはあまりにつらいピッチコンディション。
状況判断が悪いという意味で半分はたしかに松田の責任。
マルケスのマークが完全に外れるような采配をしたという意味では岡田監督の責任。
復帰戦でこの踏ん張りの利かないピッチ状態は怪我明けのDFには辛い。
それからすると戦犯と言うにはあまりに酷なシチュエーションではないだろうか?
コンディション、戦術、采配の全ての面で横浜には良いところがなかったように思う。
マリノスは負けるべくして負けた。
この試合を分析して得た結論だ。
(seri)