J-league division1 1st-stage 2nd-week(2004/3/20)
ジェフユナイテッド市原 vs 横浜Fマリノス (3-0) @ 市原臨海競技場
<ジェフ市原 スタメン> | <横浜Fマリノス スタメン>
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サンドロ マルキーニョス | 久保 アン
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羽生 | 清水
村井 坂本 | 奥 遠藤
佐藤 阿部 | 中西
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斉藤 ミリノビッチ 茶野 |ドゥトラ 松田 中澤 田中
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櫛野 | 榎本
今回はJリーグ1stステージ第2節市原vs横浜戦をレポートする。
昨シーズンから続く両チームの継続的強化の成否、戦略性の違いに注目したい。
■両チームの戦い方
ホームの市原の布陣は3-5-2。
オシム監督就任以来、掲げられた“考え・走るサッカー”のスローガンのもと、豊富な運動量を生かしたひたむきなサッカースタイルを今シーズンも実践。
やや粘性の高いマーキングを基調に、中盤からプレッシングを仕掛けてボールを奪うと、
そこから転じて今度は素早い動き出しで相手ゴールへと一直線になだれ込むショートカウンターを最も得意としている。
対する横浜FMは4-4-2ダイヤモンドの布陣。
RBの波戸やユ・サンチョルは怪我、サイド攻撃のキーマンである佐藤はコンディション不良、ボランチの那須もオリンピック予選の疲労のため出場を見送るなど、
開幕前から多くのレギュラーメンバーを欠いた中で今シーズンのチーム作りは難航している。
昨シーズンならば2人のFWが受け、両サイドへの速い展開からのサイド攻撃が見られるはずだが、現状では久保とアンの連携はあわない上に右サイドの佐藤を欠き、
カバーリングを行う那須がいないことで左サイドのドゥトラの上がりまで滞っており、まだ攻撃の代替案は見つかっていない様子だ。
■プレスバランスと押し上げの欠如

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
今シーズンの横浜には、昨シーズンまで有効だったプレッシングが機能していないようだ。
図は市原のディフェンスラインにプレッシャーをかけるシーンだが、これを見る限り横浜のそれは非常にバランスを欠いた状態で行われていることがわかる。
これは相手が強豪市原だからということとは全く関係がない。
2つ目の図も似たようなシーンで、今度はボールを回された挙句に、フィードされて簡単に自陣の深い位置で基点を作られてしまっているのがわかる。
これが何を現しているかというと、横浜のDFラインが前線のプレッシングと連動しておらず、中盤との間に大きなギャップを作ってしまっていることに他ならない。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
この試合、横浜はDFラインにも問題が多く、図の松田のポジショニングを見ても、ギャップを作り、オフサイドの取れないスペースを与えてしまっているのがわかる。
■中西のワンボランチ
この試合、横浜の中盤の底に入ったのは市原から新加入したばかりの中西だった。
岡田監督は常々、ディフェンスの前には相手の攻撃を受け流すアンカーが必要だと言っており、
昨シーズンもワンボランチを用いる際にはDFラインの前に張り付く那須をこのポジションに起用している。
問題だったのは中西がアンカーを、つまり相手の攻撃を受け流す役割を行えていたかということだ。このアンカーというポジションは、
自軍のDFラインの前でゾーン的に守り、そこからは簡単に動いてはならないことになっている。動いてよいのはDFのカバーリングの際のみだ。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
図で示したのはアンカーである中西のポジションだ。
中西はサイドに流れてボールを受けると、中央に横パス。しかしそこには誰もおらず市原にボールをカットされてしまう。
本来自分がいるべきポジションを空け、そこにパスを送りカウンターを許すというボランチとして最もやってはいけないプレーをやっている。
なぜならこの横パスをカットされて責め上がる相手を止めることこそが、本来のアンカーの仕事だからだ。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
この試合では、横浜の中盤底の守備の悪さが特に目立っており、図は市原が左サイドで相手を振り切った場面だが、
ゴール前につめる市原の選手に対して横浜はついていくことができず、バイタルエリアを相手に開放してしまっている。
アンカーであるはずの中西のポジションもこのエリアから大きく外れていることが確認できる。
岡田監督は中西のポジショニングについてこう語っている。
「前半はワンボランチにしたが、中西は本職ではないので相手のマークについていってしまう。そのため中央が空いてしまった。
後半は横並びのダブルボランチにしたら守備はある程度安定した。」
この言葉にもあるように、横浜は後半から布陣を従来のボックス型の4-4-2に変更した。
しかし、そのダブルボランチのコンビは本来岡田監督が敬遠するはずの遠藤と上野の組み合わせであるのだ。
遠藤と上野は両者とも攻撃型のボランチで、岡田監督が求める守備的な役割をこなせない。
昨シーズン、ボランチでは素人のはずの那須を無理やりボランチにコンバートし、上野を控えにまわしたのもそういうわけがあったはずなのだ。
しかし、そんなボランチの組み合わせでもワンボランチよりは・・・岡田監督はそう判断せざるをえないほど、前半の布陣は機能しなかった。
わからないのは、そもそもなぜ本来の布陣を捨ててまで中西をこのポジションに起用したかということだ。
岡田監督が会見で避けていたが、推測される理由は主に2つある。
1つは、アンカー自体が役割さえ理解すれば、さほど難しいポジションではないこと。もっとも、中西はこの役割自体を理解していなかったし、
それはつまり岡田監督が彼にちゃんとした説明をしていなかったとも言える。
2つ目には、横浜は無理にでもダイヤモンド型にしたかった“理由”があったこと。
それについては次の項目で述べることにする。
■サイドでの数的不利
先にも挙げたように、横浜はこのワンボランチの布陣を昨シーズンも何度か用いている。
その傾向を見る限り、岡田監督はサイドでの数的不利を補うためにこの布陣を用いる確率が非常に高いということが言える。
そういう目で見ると、市原の布陣は前線が3トップ気味で、加えて中盤の村井や坂本といった鋭いサイド攻撃ができる選手がその後ろに控えていることを考えると、
サイドの守備をSBだけに任せるわけにはいかないと考えたのだろう。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
ポイントは横浜の奥と遠藤が、この村井と坂本に対応できていたかという点だ。
図は市原のサイド攻撃のシーンだが、実際には相手のスピードに乗った攻め上がりには対応できず、当初想定したマーキングはできていなかったのである。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
しかも、このマーキングの指示が実際には横浜により深い問題を生じさせてしまう結果になる。
前半30分の横浜の失点のシーンだが、横浜の4バックは相手の前線の3人に対応するために内気味に絞って対応している。
そのことで生じる両サイドのスペースを突こうと上がってきた市原の両SHに奥と遠藤が対応したことで、
DFラインに横浜の選手が6人並び、中盤に密度が極端に下がってしまった。
市原はそのスペースにうまく侵入し、そこからDFラインの裏を狙ってフリーでロブボールを入れる。
中澤がいち早く反応してこれをとめたが、これによってDFラインがより深く下がり、同時にFWのマークがはずれてしまったのだ。
跳ね返したセカンドボールを市原の選手が拾うと、バタバタする横浜のディフェンスを尻目にほぼフリーの状態で豪快なミドルシュートを決める。
つまり機能しなかったのは中西だけでなく、両サイドの奥や遠藤、加えてトップ下を勤めた清水に至るまで完全に横浜の中盤は機能不全を起こしていたのだ。
そしてこの原因を作ったのは他でもない岡田監督なのだ。
(余談だが、岡田監督のこういった奇策染みた手は、札幌時代からほとんど成功した例がないということも付け加えておこう)
では横浜はどうすれば市原の攻撃を抑えることができたのか?
ヒントは前半25〜29分の失点シーン直前までの横浜の対応に見られる。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
この時間帯の市原は、この試合の中では珍しいことにかなり責めあぐねていた。
このとき横浜は清水が下がたことで4-4-2のフラット気味の布陣を取り、積極的に中盤のスペースを埋めることができていた。
この布陣はもともとのボックス型にかなり近い対応を行うことができる上に、効率よくスペースを埋めることができる。
つまり本当に市原のサイド攻撃を気にしていたのなら、ボックス型を若干崩して、相手にできるだけスペースを与えずにFWで基点を作らせず、
中盤からの攻め上がりを抑制するという対応が正解であった可能性が高い。
■オシムスタイルの問題点
現在好調の市原だが、勝利の影に隠れている戦術的問題もある。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
図は市原のディフェンス対応の例だが、実はこれは先の横浜と結果的に全く同様の問題を引き起こしている。
というのも、市原のディフェンススタイルは攻撃をまるで反転したように運動量を生かして人にしつこくついていく、いわゆるマンマークに近い守備なのだ。
そのため、横浜の両サイドにMFが張り出すと市原のSHもそれにしつこくついていくことで、
先の横浜の失点シーンとほぼ同様のシチュエーションを実際には生み出しているのである。
その空いたスペースを市原が素早く使えたのに対し、横浜の急造SBがそこを感じることができなかっただけだ。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
市原のマーキングの意識が高すぎるのは次のようなシーンを見ても明らかだ。
このシーンでは横浜の選手が5人に対して、市原の選手がGKまで含めると9人もおり、
そのいずれもが自陣のペナルティーエリア内にポジションをとるという流れの中の守備としてはかなり異常なシチュエーションと言える。
当然、それだけの人数をかければ中盤にスペースを生じるのは必至。実際、そこには大きなスペースが存在しており、
横浜がそこを使うことは可能であったはずなのだが、それができるほど横浜のチームコンディションが上がっていなかったのだ。

(『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ1stステージ第2節 市原 vs 横浜FM』より)
この試合での横浜の攻撃の運動量の少なさは明らかで、図にもあるように本来ならば逆サイドを駆け上がるドゥトラの上がりも全く見られず、
ピッチを狭くしか使えていなかった。市原のプレスがことごとく効いてしまったのにも、こういう理由がある。
GKの榎本 達也は
「前でボールが収まらないし、サイドで起点もつくれなかった。全体的にジェフよりも運動量が少なかったと思う。
ディフェンスもマークがしっくりいかないところを突かれた」
というコメントを残している。
■市原の目指すスタイルと今後の動向
「私がジェフに来て一番いい試合だった。とにかく一番いい試合だったと思う」
試合後のオシム監督のコメントには珍しくチームへの賛辞の言葉が並ぶ。
しかし、3-0と相手を圧倒したのだから何か劇的に変わったのだろう、との記者の質問には
「昨年と何かが変わったわけではないし、ここが変わったと感じる点もない」と言っている。
確かに市原に昨年と変わった点はほとんどない。
唯一、チェが抜けた影響も、前線の決定力が若干低下したものの、そこを運動量でカバーしているので差し引き0といったところだろう。
ただ、ランニングスタイルを貫く市原オシムサッカーに一抹の不安を覚えるのも事実だ。
その不安の1つは、絶対の形を持たない市原の攻撃だ。
市原の攻撃は、一言で言えばすべてカウンターなのだ。
相手のミスなしそれを行うことは不可能だ。
問題になるのは相手が引いてきてスペースがない場合、もしくはプレッシングを攻撃につなげられないような場合だ。
リアクションに分類される市原の攻撃には、遅攻時の絶対的な得点パターンが不足している。
相手を崩すのではなく、相手のミスに付け入るサッカー。
「ウチは相手にプレーさせないことで成り立っているチームだが、自分たちもプレーできるようになりたいものだ」
オシム監督自身もこのことをよく理解しているようだ。
2点目を挙げるならば、それはランニングスタイル自体の問題だろう。
例えばバスケットにラン&ガンという、現在の市原と非常に似たランニングスタイルの戦術がある。
よく用いられるのは若くて走れるチームで、得点力を生かして一試合の中での攻撃回数を増やすことで、
走り合いに勝ち、なおかつ圧倒的な攻撃力で押し切ろうとする積極的なバスケットだ。
魅力的だが、実際にこのスタイルで頂点まで登りつめるチームは少ない。
その理由は2つあり、シーズン途中に一度大きくコンディションが落ち込む時期が来ることと、
ベテランを中心とした老練な試合運びをするチームには滅法弱いというのがそれだ。
整理するとこのスタイルは自分たちから崩れやすく、また相手が歩調を合わせてくれないとその効力を失うのだ。
市原にもそれは多くの部分で当てはまると言える。
夏場の苛酷な環境で試合を行う日本ではランニングスタイルは一時的な崩壊を招く危険性は否めない。
さらにトランディション、攻撃と守備の切り替えをコントロールするチームに対して若いチームが対処できるのか、難しい課題が見えてくる。
魅力的ではあるが、少なくともトップに登りつめるのには不向きなスタイルであることには変わりはない。
しかし、だからといってそれが市原にとって不可能であるというわけでもない。
むしろ興味深いのはオシム監督自身が、自分のスタイルがそういう弱点を抱えていることを十二分に承知の上で、
敢えてそれを選び取るユーゴ人独特の諦念のようなものを感じ取れる点であろう。
最後に、対戦相手の横浜について、オシム監督はこうコメントしている。
「横浜FMは自分たちのプレーができなかったと思う。それでも横浜FMよりうちのチームがいいと言っているわけではない。
今日は横浜FMが負けたけれど、上位に上がってくると思う」
昨年の王者がこのまま尻込みするはずもない。
開幕からいいサッカーを見せる好調市原はもちろんのこと、“試合をしながらチームを作る“という全く新しい試みに挑む横浜FMの今後の動向にも注目したい。
(seri)
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・Sports Navi 「西部謙司の眼」
<目次>
■両チームの戦い方
■プレスバランスと押し上げの欠如
■中西のワンボランチ
■サイドでの数的不利
■オシムスタイルの問題点
■市原の目指すスタイルと今後の動向
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