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「Jリーグチャンピオンシップ分析」(2004/12/31)J-league championship ・横浜Fマリノス vs 浦和レッズ (1-0)(0-1 PK4-2) | [ 横浜FM スタメン ] |[ 浦和レッズ スタメン第1戦]|[ 浦和レッズ スタメン第2戦] | | | | 坂田 清水 | エメルソン | エメルソン 永井 | | 田中 永井 | 山田 | 奥 | | |ドゥトラ 田中 |三都主 山田 |三都主 平川 | 那須 上野 | 長谷部 鈴木 | 長谷部 鈴木 | | | | 河合 松田 中澤 | 内館 闘莉男 アルパイ | 内館 闘莉男 アルパイ | | | | 榎本 | 山岸 | 山岸今年が最後の開催となったサントリーチャンピオンシップ。 1stステージを制した前年度年間王者横浜FMと、2ndステージを制した昨年度ナビスコカップ覇者浦和との戦いは、最後を飾るにふさわしいものとなった。 今回は2004年度年間王者に輝いた横浜FMの対浦和戦略を中心に、両チームの戦略的な意図を探る。 1. 「出来ること」 「出来ないこと」
浦和の2ndステージでの好調さは誰の目にも明らかだった。 ![]() (『J SPORTS:2004年シーズンJ1リーグ 横浜FM vs 鹿島』より) ![]() 松田:「鹿島戦が終わった後に監督から『信頼関係がなくなっているんじゃないか?』と言われた。 自分個人としても上がっていくことで自分のディフェンスが疎かになっていた部分があったんではないかと思う」 鹿島戦の後に監督の口から出たのはこれだけではなかった。 「あとの試合、年間勝点1位はいい。CSに勝って年間チャンピオンになろう」 そう選手達に言ったのはちょうどこのときで、そこからの残り1ヶ月間を、全て対浦和戦略に当てることにしたのだった。 しかしながら、横浜FMはユ・アン・の両外国人選手に加え、日本代表のエースである久保、 さらには中盤ならどこでもこなせる遠藤までをも怪我で失うことになりチーム状態が思わしくない上に、 ほとんど飛車角落ちという状態でチャンピオンシップに望まざるを得ない状態にまで追い込まれていた。 今の横浜には浦和を圧倒するだけの力はないのは明らかだった。 そんな中では何が出来ないのかを考えるより、何が出来るのかを考えるのが自然だった。 戦略上の主導権のほとんどは浦和が握っており、横浜はその隙間をついていくより他なかった。 「ウィニングチーム・ネバーチェンジ」の原則にのっとれば、浦和に戦略は必要なかった。 彼らはまだ若いチームで経験が不足している。故に何らかの策を練ったとしても、それを180分間遂行するだけの精神力はまだ身についていない。 短期間でこれ以上チームに変革をもたらしても、それでよくなる保障はないし、小手先の戦略を失敗して負けて後悔はしたくない。 このままでいくという浦和の戦略は正しい。だが一方で、このことが横浜の戦略を非常に有効なものにしてしまったのも事実だった。 横浜にとって唯一の救いだったのは、鉄壁の守備陣だけは健在だったことと、 残ったFW陣は浦和の苦手なDFの裏を突くタイプという戦略上の相性がよかったことだろう。 この結果、横浜の「守備を固めて裏を狙う」という大筋のゲームプランに目処が立ったが、 この前提条件は先制点を与えていないという都合のいい状況で組まれたものだ。 仮に浦和が先制をすれば突くはずのスペースが消滅し、点を取るために前に出ざるを得なくなると、 今度はエメルソンと田中と永井にスペースを与えることになる。そうなればもはや横浜に絶対に勝機は訪れない。 細い橋、だが勝つためには渡らなければならない。 横浜の戦略はこれで固まった。 1.どんな犠牲を払ってでも絶対に先制点を与えない。 2.攻撃をしのぎきり、相手の裏を狙い続ける。 以下は、このゲームプランをいかなる方法(戦術)によって実現したかを分析していくとにしよう。 2. ゲームプランに基づいた横浜の基本戦術対浦和戦略ということを考えた場合、浦和の強力攻撃陣を如何にして止めるかは横浜の最重要課題である。 リーグ屈指の守備力を備えた横浜といえども、浦和のFW陣を通常の対応だけで無失点に抑えることは難しい。 特にボールを持ってからドリブルを始められてしまえば、それを止めることは更に難しくなる。 守備側が何かできるのはボールを持たせないこと、もしくは持たせてもスピードを与えないこと、この2点に絞られた。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 図は横浜の浦和FW陣への基本的な対応を示したシーンだ。 まず3トップ気味に構える浦和のFWに対しては3バックが各ポジションで手前のマークを捕まえることで対応する。 チェックに行ったCBはスピードに乗らせないようにいち早く縦のドリブルコースを切る。 しかしこの時間を長い状態で保てば内に切り替えされて、ゴール前に侵入されてしまう。 そこで横浜は浦和のサポートよりも早くそれを行い、ヘルプに来た選手が中のコースを切ることでボールを放さざるを得ないという寸法だ。 最初に縦を切る理由は、もちろんヘルプの時間を稼ぐ意味合いも含まれている。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 今度は中盤でFWが下がって受けた場合の対応のシーンだが、サンドの対応していたのは先ほどのようにWBの田中ではなくボランチの上野である。 サイドでボールを持てばWBが、中央でボールを持てばボランチとのサンドを基本的な対応として、 1対1で対応する場面と時間を極力少なくするような約束事や意思を強く感じることが出来る。 しかし、当然こういった数的有利を生かした守り方も絶対的なものではない。 次のようにサンドに回る中盤の選手の対応が少しでも遅れればこの鉄則が崩れ、最悪一気にDF陣が置き去りにされるというリスクも含んでいる。 ![]() ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 図はこうした対応に横浜が失敗したシーンを示している。 左の図は、ドゥトラの対応がほんの一瞬遅れただけでエメルソンに置き去りにされた場面。 右の図は、同様に浦和のカウンターから横浜の対応が遅れているのを見計らって永井がドリブルでサイドを一気に抜け出していく場面。 どちらの場合も中盤の対応が遅れており、実質FWとDFの1対1のシーンを作られてしまっている。 基本的にこうした横浜の対応は浦和に対しては非常に有効であったが、だからといって浦和の個人能力を封じ込めるまでには至っていないことがわかる。 これだけの対応をしていながらも、180分間の中の1度のミスで失点していても全く不思議はなかったのだ。 上記は、横浜の守備における基本的な対応を示したに過ぎない。 やはり浦和の攻撃で問題になるのはエメルソンという個人に対する対応となるだろう。 何らかの特別な処置が必要なのは明白だった。 ![]() (『NewsBird:2004年J1リーグ 浦和 vs 市原』より) 例えば、図は今シーズンの浦和対市原の試合のワンシーンをピックアップしたものだが、 DFラインを敷かない市原の守備陣はエメルソンのスピードに対応するために先回りでポジションを取り、浦和の攻撃陣に余分なスペースを与えることとなった。 その結果は4失点での大敗というもので、これはエメルソンに対応する上での悪い事例といえるだろう。 これとほぼ同様のシチュエーションで横浜が行ったのは次のような対応だった。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 横浜が行き着いた答えは市原のような先回りでの対応ではなく、エメルソンにスペースそのものを与えないこと、つまりDFラインのコントロールを利用することだった。 図では中沢がDFラインをリードし、巧妙な駆け引きからエメルソンをたくみにオフサイドに追い込んでいる。 同じように高いラインによって押さえ込もうとした大分が浦和に大敗したのとは異なり、横浜はDFラインのコントロールに巧妙な駆け引きを持ち込んで、難敵エメルソンを抑えることに成功した。 エメルソンを熟知した岡田監督の高い手腕が垣間見える対応だといえる。 2-3. 「浦和の激烈なプレッシングを如何にして避けるか?」 浦和の攻撃陣を抑えるのも一苦労だが、横浜が攻撃に回ったときに待っているのは浦和の強烈なプレッシングだ。 これについて、実は岡田監督はかなり早い段階で見切りをつけていったことがわかっている。 「今のうちがボールを繋いだら確実に浦和の餌食になる。それを避けるには中盤をボールが経由しないようにするしかない」 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第2戦 浦和 vs 横浜FM』より) こうと決まったらリアリストたる岡田監督の策は徹底していた。 第1戦での狙いどころは内館と三都主のいる左サイドの裏だった。 ただ注意しておかなければならないのは、三都主はともかく内館のディフェンスやヘディングが決して弱いわけではないということ。 あくまでも3バックの3人の中で狙うならば誰が最もマシであるか、という程度の差でしかない。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 浦和の左サイドの裏にロングボール放り込む横浜の狙いは主に3つある。 1つは内館のヘディングのこぼれ球を拾うこと。 榎本「ロングキックは『内舘(浦和)のところを狙え』という話だった。大ちゃん(奥)がサイドに流れるから、そこを狙いつつ蹴った。 高さのあるアルパイや闘莉王を狙うより内舘のほうがいいという話をみんなでしていた。ネネが出場停止と決まった時点でそこを狙うつもりだった」 図はそのシーンを1つを示したものだが、闘莉男やアルパイに比べれば遠くに飛ばない内館のヘディングならばセカンドボールを拾う確率は比較的高くなる。 もし浦和陣内でボールを拾うことが出来れば、先ほど懸念されたプレスをかいくぐってボールを繋ぐ必要がなくなり、結果的に攻撃の起点を作れることになる。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 2つ目としては、図のように三都主のボール処理のまずさを狙って、左サイドで再びボールを奪取しようというものだ。 内館のヘディングでこぼれたボール拾うのは当然左サイドを担当する三都主であるが、三都主は自陣深くでもボールを持つ癖があり横浜はそこを狙っていた。 最後に3つ目として、このように浦和の両WBのうちより攻撃的な三都主を守備の対応の機会を多くすることで、浦和のプレスを抑制し、なおかつ攻め上がりの機会を奪う意味合いがあった。 この戦略は的中し、浦和の両WBは第1戦では自陣にこもる時間が極端に多くなっていた。 横浜のダブルボランチやWBが守備にも相当の労力を注がなければならないとなったことで、必然的に横浜の攻撃は少人数でチャレンジする回数が増えていく。 2トップが裏を狙う一点突破型の攻撃、しかし単純にロングボールを放り込んだならば強力なバックス陣に跳ね返されるのが関の山。 そこで横浜は一計を案じた。 2トップの動き方に制約をつける事で、裏を狙う攻撃をより効果的なものにしていったのだ。 ![]() ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 図は横浜の2トップがサイドを突破したシーンを示したものだ。 浦和の3バックのサイド裏に2トップが縦にポジショニングを取ることで、サイド側のCBとの数的有利を形成することに成功している。 3バックのサイドスペースはよく議論に上るところではあるが、横浜のこういった極端なポジション取りは、自分達の攻撃の選択肢を極端に狭めるものであると同時に、 その成功率も非常に低いものでしかない。3バックの攻略というよりは、対浦和戦でのオプションと見るのが正しいだろう。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 次のシーンはサイド裏をつかれた際の浦和の弱みを示したものだ。 清水がサイドにポジショニングし、闘莉男がその裏のカバーに行ったことでDFラインのコントロールがつたないアルパイを1人残すこととなり、 そこから決定期を作られた場面だ。浦和のDFラインのキープレーヤーは闘莉男であるが、その積極的な振る舞いが守備全体のバランスに大きな影響を与えている。 そのことについてはまた後述することにしよう。 3. 勝敗を分けた分水点
ホームアンドアウェーでの戦いでそれぞれ1-0とした横浜と浦和の差は何だったのか? ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) まずは試合で見られた各チームのセットプレーについて見ていくことにしよう。 図はコーナーキックを河合がヘディングで決めたシーンだ。 中沢:「得点シーンは自分がニアに飛び込む予定だったけど、河合のマークが低かったんで『行け』というような合図を送った。向こうも気づいてくれたんでよかった」 コメントにもあるように、通常ならば他の選手を囮にしてニアに飛び込むはずの中沢だが、このときは河合のマークが長谷部ということもあってお互いの役割を交代している。 河合は長谷部との距離を図りながら中沢とそのマーカーを壁として利用し、長谷部を引き剥がしにかかる。 スクリーンアウトと呼ばれるこのプレーは、球技全般で広く使われるオーソドックな戦法だ。 壁をうまく利用した河合は味方の空けたスペースにまんまと飛び込み、ヘディングシュートを決めている。 しかしながら、何故ヘディングの強い河合のマークが長谷部だったのかは、疑問の残る部分ではある。 スクリーンアウトがなくても、ヘディングに競り負けていた可能性はかなり高かったのではないだろうか? ![]() (『NewsBird:2004年J1リーグ 浦和 vs 市原』より) 浦和はセットプレーによる得点が多い一方で、失点も同様に多いことでも知られている。 その原因は主に2つあるのだが、1点目はマークの確認の甘さにある。 河合のゴールシーンでもわかるように、セットプレーにおける身長差は最大のチェックポイントであり、浦和の場合その確認がひどく甘い。 多くのチームの場合、スタメンの発表があった時点で誰がどのマークにつくのかという確認が行われているのでこういった事態になることはまれだが、 浦和の場合はシーズンを通じてそこ部分に注意が行き届いていないように感じる。 2点目として、セットプレーの守備における集中力の欠如が上げられる。 これはGKやDFリーダーのリーダーシップに依存する部分も大きいが、例えば先に例の挙げた対市原戦においても浦和は集中力を欠いたリスタートの守備で 相手に何度もチャンスを作られる場面が目立つ。図示したシーンではロングボールが無理と判断したミリノビッチの切り替えに全くついていくことが出来ず、 サイドを切り裂かれてしまっている。ヘディングの強い浦和のDF陣を考えた場合、こういった平面的なリスタートを行うチームは当然想定できていなければならないにもかかわらず、 こういった破られ方をされてしまっている。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第2戦 浦和 vs 横浜FM』より) 守備とは対照的に、浦和の攻撃時のセットプレーは非常に練りこまれたものだった。 特に第2戦で見せた二つのセットプレーは横浜の守備陣の裏を完璧についたトリックプレーだった。 1つ目のエメルソンへのグラウンダーからのシュートは、ヘディングの強い浦和の選手達とキッカーとしての三都主に対する横浜の心理を巧みに突いた 素晴らしいものだった。先ほどの横浜と同様に、アルパイのスクリーンから抜け出したエメルソンがシュートを放っているが、これが決まっていれば試合がどうなっていてもおかしくなかった。 ![]() ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 浦和 vs 横浜FM』より) 2つ目も山田が絡んだ場面で、同様にDF陣の前のスペースをうまく利用して決定的なヘディングシュートまで持ち込んでいる。 セットプレーは互いが高いレベルであればあるほど、駆け引きの要素が非常に強くなるもの。 これらのうちのどれかが運良く決まっていれば、試合は間違いなく浦和に有利に傾いていったのだろうが・・・ 長谷部:「PK戦では、キーパーの動きは関係なく、最初から右に蹴ろうと決めてました。」 榎本:「PKに関しては、まず闘莉王の1本目は試合前にデータを見ていた。1番手は特にギリギリまで我慢して、 どうしても決めたいという思いで蹴ってくる。ビデオの中にも我慢してサイドに蹴ってくるシーンがあったし、 こっちは根負けしないようにしていた。そしたら向こうが先に蹴ってくれた。イメージ通り。 データもそうだし、自分が信じたとおりに自信を持って飛んだ結果だと思う。 長谷部の2本目?彼はナビスコカップの時も蹴っていて、助走の入り方がちょっとあの時と違っていた。 レッズは1本は外しているし、追いつきたい気持ちが強いから、ボールを置きにくると思っていた。 だから自分も自信をもってやれた。PKは予想通りになったのかな。ビデオはPKシーンだけ編集してもらったものを見た。 とにかくVゴールでも何でもいいから、勝って終わりたかった。PKは運の方が強い。今日はウチに運があったのかな」 とにかくこのコメントに全てが現れている。 横浜は自分達のゲームプランを決めた段階で最後のPK戦まで含めた全ての準備を行っていた。 そして拮抗した試合がその予見通りPKによる決着だったのだから、横浜の勝ちはある意味では必然だった。 分水点となったのは、まさに運をつかむためのほんの小さな努力の積み重ねと言えた。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) 浦和は非常に強く、チャンピオンを名乗るに相応しいチームだったが、細かなポイントを見ていくとかなり荒削りで未整備な部分も多かった。 特に目立ったのはサイドのサポートの遅さだった。FWに預けられたボールを横浜がサンドするというのは1戦目でも明らかだっただけに、 2戦目でそうして空いた両サイドのWBのサポートによってFWを助け、またサイドを駆け上がるというシーンがほとんどなかった。 これは明らかに選手がボールウォッチャーになる昔の浦和の悪い癖を今でも引きずっている証拠だと言える。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第1戦 横浜FM vs 浦和』より) これが動き出しの早い横浜ではFWがボールを持てば、サイドを必ず早い段階でWBがサポートして2人のコンビネーションで ボールを有効に動かしていた。 ![]() (『NHK BS1:2004年チャンピオンシップ第2戦 浦和 vs 横浜FM』より) 浦和が横浜のこういった守備を破るには、上記のようなWBの攻守の切り替えの速さだけではなく、 図のように2対2、1対1などのサイドチェンジによる局面の細分化という手があった。 数的な有利がなければ、横浜の守備が浦和の攻撃に耐え切れなくなることは最初に示したとおりだからだ。 これに関してはチャンピオンシップ開幕前に長谷部が面白いコメントを残している。 「縦に早い攻撃が多くなって、サイドチェンジする場面がほとんどなくなっている」 まさに長谷部の予感は的中、縦の早さが横浜の守備によって封じられると浦和の攻撃の展開は極端に単純になってしまった。 長谷部の他に、山瀬などのパスによるアクセントを加えられる選手がいればまた違った展開にはなっていたのだろうが。 最後に、おそらく岡田監督は気づいていたであろう浦和の致命的な弱点について触れておこう。 ![]() (『NewsBird:2004年J1リーグ 浦和 vs 市原』より) これもやはり対市原戦での場面を示したものだが、浦和では相手の中央付近へのロングボールや前線にターゲットマンがいる場合には、闘莉男が主にその処理に当たっている。 チャンピオンシップではこういった場面は実はひとつもなく、明らかに”闘莉男にヘディングをさせない”ことがキーワードになっていた。 もしこれが頻繁に起これば、せっかくのロングボールをまた横浜陣内に押し戻されてしまうし、そうしたセカンドボールへのエメルソンの反応はかなり早く、 ボールを拾ってから一気にゴールが狙われる可能性も横浜にはあったからだ。 ![]() (『NewsBird:2004年J1リーグ 浦和 vs 市原』より) だがこういった積極的な闘莉男の対応は、ディフェンスの混乱を招くことにもつながる。 つまり冒頭で示した横浜の松田の飛び出しを狙われたのと同様のことが実は浦和にも生じているのだ。 図では、闘莉男の飛び出した後方のスペースを狙って、二列目から走り込んで裏を取られるシーンを示している。 ![]() (『NewsBird:2004年J1リーグ 浦和 vs 市原』より) こちらも同じようなケースで、闘莉男が楔のボールに積極的にアプローチすることを見越して更にその後ろのアルパイとネネの前のスペースにボールを入れている。 現時点での浦和の守備のシステムでは、このような単純なボール回しでも数的不利を作り出す危険性があり、まだまだ課題が山済みだ。 浦和のディフェンスの強さの一因である闘莉男の積極性が、守備の最大の弱点にもなりえるというところは非常に興味深い。 横浜も、本当はこのディフェンスの脆さを尽きたいところだったのだろうが、先ほどいったような闘莉男のロングボールの強さと、 逆に巻のようなロングボールと足元の楔を受けることの出来るターゲットマンが横浜にいなかったことが、そこを突いていかなかった最大の要因だろう。 4. あとがき
「第1戦の展開というのは、第2戦でやりたかった。ウチは手の内を全部さらしちゃって、すごく怖かった」 5. 関連リンク![]() | ||