■テレ・サンターナのサッカー哲学
ブラジル人の例にもれずテレの発言には当たり前の正論が多いが、その中でも目にとまったものを紹介したい。 当たり前の正論ではなく、一見奇異に見える発言_例えばフィリップ・トルシエのキャプテンは要らないというような_にこそその人物の本当の哲学が見られるものである。

_オフサイドについて
◆「ある意味オフサイドは試合の醍醐味を消してしまっている」
◆「今日、試合では選手達はブロック単位で動いているが、オフサイドルールを改定すれば、 選手はブロック単位で動かなくてもよくなり、サッカーはもっと自由なものになる。 選手の動きが大きくなることによってグラウンド自体をもっと広く使えるようになる。」

オフサイドについて否定的な態度を取るのはテレに限らず、南米人ではさほど珍しくない。 オフサイド自体プレーエリアを限定することによって攻撃を制限するルールで、 特に90年代以降このルールを利用してプレーエリアを縦横に圧縮する戦術が出てきた。 それにともなって、最終ラインはもちろん中盤もブロック単位で移動しなければならず、 選手個人の自由度はテレの言うように確かに下がったかもしれない。スペクタクルな攻撃を望むのであれば確かに邪魔なルールだろう。 逆を言えば、オフサイドルールを利用した高度な組織戦術はそれだけ破ることが難しいとも言える。 1つ確かなことはテレのサッカーはオフサイドルールの恩恵をそれほど当てにしていないので、ルールが改正されれば有利にはなる。 そうなればプレッシングというものも存在しなくなるであろう。

_ポジションについて
◆「才能のある選手でありながら、グラウンドで的確なポジションを与えられていないために目立たないという場合がある。 監督はそうした選手がもっと活躍出来るようにふさわしいポジションを見つけなければ成らない。」
◆「チーム内でのポジション決定には、様々な要因が影響する。個人の性格や身体的特徴がそれだ。 私は大概、空いているポジションに的確な選手を当てはめることが出来た。」

テレは流動的なサッカーを指向していたが、一方でポジションに対してこだわりをっもっていたことは興味深い。 流動的なサッカーを行うにあたっても選手の役割分担は必要で、適切な位置に選手を配置することも変わらなく重要だということであろう。 また、テレがゾーンディフェンスを行っていたこともその要因の1つなのではないだろうか。

_選手育成について
◆「よい選手を育てる最適の方法はファームシステムだけだ」
◆「選手の育成で良い結果を上げようと思えば、選手達に練習させ、勉強させ、適切な食事をさせれば良い。 そうすればクラブは、実力を最大限に発揮するように要求されるときに、必ず期待に応えてくれる完璧なコンディションの選手を手に入れることが出来る」
◆「ブラジルでは大概の人々は地元のグラウンドやペラーダと呼ばれる草サッカー場でサッカーを始める。 他の国々と違いブラジルの学校制度はサッカーへの奨励は限られたものでしかない。」

テレはストリートサッカーよりも学校教育など人工的な選手育成をより評価しているようだ。 ストリートサッカーの衰退を嘆く声が世界中から聞こえてくる昨今。 ブラジル人でこれほどストリートサッカーに対する信仰が薄い人物はめったにいないのではないだろうか。

◆「アメリカでは高校や大学でバスケットを始め、その後プロになるといったプロセスがあるが、ブラジルでもそういったシステムがあってしかるべきだ」

併せて、高校や大学からサッカーを始めてもプロになる道があるべきと考えていることも面白い。 バスケットボール、アメフトなどアメリカンスポーツは、タイムアウトなど試合が止まる機会が多いので戦術面での監督への依存度が高く、選手にはアスリート能力がより重要視される。 しかし、ことサッカーにおいては競技の開始年齢が遅いとボール扱いやサッカーセンスといった_ブラジル人の最大の長所_が致命的に身につかない。 テレはアスリート能力というよりも、おそらくプロ意識、規律というものを選手に強く求めたのだろう。 しかし、テレはブラジル人であり、彼の周りにはサッカーセンスの塊のような人間が大勢いることは当然頭に止めておくべきだろう。

_審判について
◆「今日ではレフェリーの過ちを証明できることが少ない、こういったことを詳細に検証できる技術手段は導入されてもいいはずだ。 レフェリーが誤った審判をしたために1つの大会が無為に終わってしまうなどということはとんでもないことである。」

フットボールの魅力を損なうとしてビデオ判定の導入に二の足を踏む人も多い。
しかし、どうやらテレは違うようだ。テレにとってフットボールはあくまでフットボールであり、それ以下でもそれ以上でもないのであろう。
ブラジル国民から絶大な尊敬を集めているテレ・サンターナは実は非ブラジル的メンタリティーの持ち主なのかもしれない。

_ファウルについて
◆「現在におけるサッカーの最大の敵はまさしくファールである。」
◆「今のチームはどこもサッカーをプレーするよりも、いかに相手のプレーを中断、中止することばかり考えている。」
◆「我々がサッカーに期待することは芸術的なプレーで、観客が真に満足できるのは美しい試合なのである。」

テレはサッカーが美しくあるためならば、ルール変更も全く辞さない。テレにとってサッカーは芸術であり、同時に最高のエンターテイメントでなければならないのだ。
(GAITI)

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