日本代表タクティクスレポート(1)

西村監督の01Wユースから始まって、小野監督のツーロン国際大会、そしてアテネ五輪の監督を務める山本監督が指揮を取ったアジア大会に至るまでのチームにはそれぞれ異なる監督が指揮を取っているにもかかわらず戦術に“ある”一貫性が感じられる。

彼ら3人はそれぞれ日本サッカー協会技術委員会のスタッフで、特に小野、山本両監督はここ10年近くユース年代の代表監督やコーチを努め、“世界のサッカー”を肌で感じてきた人物である。そんな彼らが世界と戦うことを想定して議論を重ねた据えに実現した戦術である。日本人の特徴を考えた上で随所に戦術的な工夫や斬新な試みが見られ非常に興味深いものになっている。 この3つの代表の戦術は世界のサッカーの現状と比較するとさらにわかりやすく浮かび上がってくる。この日本サッカーの優秀なブレーン達が出した結論を紐解くために彼らが指揮した3つの日本代表の分析から行っていきたい。

■『1トップ2シャドー』と『第3の動き』〜01Wユース日本代表〜
これは西村監督のユース代表の有名なコンセプトであるが、“1トップ2シャドー”は“第3の動き”を行いやすくするために採用された前線の形なので、まずこの“第3の動き”から説明する。

Ex1_裏への抜け出し Ex2_3人目への落とし

具体的にいうと、上記の図のような配置で、AからBにパスが出た時にそれと連動する形で動くCの動きが『第3の動き』である。これはゲーム中で大なり小なり様々な局面で用いられるが、上記の図のようなポストプレーからの展開でDFを突破する時に最も重要な意味を持ってくる。

第3の動きの最大のメリットは、局面での攻撃の選択肢が増えることである。 例えば、ポストプレーを行うときにAとBの2人だけの場合、楔のパスを受けたときのBの選択肢は「Aに戻す」か「自ら振り向く」かの2つだけである。それがCが1人加わることにより「裏に抜けたCに合わせる」「Cにボールを落とす」など選択肢は広がり、DFがこれを全てケアすることは非常に難しくなる。まして、Bが足元のテクニックのあるプレイヤーでボールを持ってからマークの選手の動きを見て瞬時に選択肢を変えることが出来るならばDFはほぼノーチャンスと言って構わないだろう。

本大会では、最終的にトップに田原、シャドーに前田、山瀬と言う組み合わせになったが、これはシャドーの2人も安定したポストプレーを行うことが出来る人選をしたためだろう。シャドーの2人のポストプレーが計算できると、両サイドの駒野、石川と組み合わせて、第3の動きを選手の役割を固定化せずに行えるようになる。

試合を見ても駒野、石川の両アウトサイドはボールを持ったらほぼ全て中に切れこみ、トップの3人に楔のパスという展開だった。これは戦術が徹底されているとも言える半面、少々ワンパターンだったとも言える。この第3の動きからの攻撃は楔のボールが入ってからの展開で止めることは非常に難しいので、守備の目標はおのずと「楔のボールを入れさせない」「楔が入った瞬間に潰す」などになる。つまり楔のボールのタイミングを読まれないことが重要になってくるのであるが、試合が進むにつれてサイドからトップに楔を入れる攻撃の頻度が高すぎるために相手に攻撃のパターンを読まれ始めた。このあたりは、縦への突破も試みることによって相手のDFを広げるなど工夫が欲しかった部分で、今後の課題として挙げられるだろう。

ただし、総合的に見れば攻撃については非常に可能性を感じさせたと言えるだろう。1トップ2シャドーで変則的な3−6−1(3−4−2−1)というフォーメーションは第3の動きを意識して計算されたもので、その特性上中盤に厚みがあり、おのずと選手同士がお互いに近い距離にいることが多い。第3の動きにワンツーやスルーなど様々なバリエーションを交えて組み立てられる攻撃は非常に見ごたえがあり、最終戦のチェコ戦のように“はまった”試合は素晴らしい爆発力を見せた。

反面、守備については手が回らなかった印象で、守備がチームの足かせになってしまった。攻撃に力を入れすぎたために守備がおざなりになってしまったとも言えるかもしれないが、この『高密度な中盤の厚み』はプレッシングなど守備戦術としても応用できる下地があり、この部分を伸ばしていけば、この魅力的なスタイルを継承したままでも戦える可能性は十分に感じられた。
(GAITI)
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